コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ジュリア(1977/米)

作品中ヘルマンが書いていた作品が『噂の二人』です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1970年代後半は社会運動が盛んな年代で、アメリカのみならず、世界中に多くの社会運動が起こっていた。それまでの儲け至上主義から、もっと身近なものを大切にする視点の転換。虐げられている人達に対する憐れみの心。そして世界で多発する紛争などで生活を脅かされている人びとを救おうという運動である。市民がようやく自分たちの力を自覚し始めた年代と言っても良いだろう(勿論背景にはヴェトナム戦争があったが)。

 その中で起こった運動の一つにウーマン・リブと呼ばれる運動があった。これまで虐げられていた女性を解放しよう。という運動であり、自立した女性像を目指す運動である…そういう意味では、ずいぶん現代はこの運動の恩恵を受けてると思われる。  本作はそのリブ運動で最も支持を受けた作品だそうだが、本作ではジュリアの生き方を通して「強い女性」を描ききっている。

 ジュリアは活動家であり、主人公のリリアンが自分自身の成功を夢見て悪戦苦闘しているのを尻目に、人のために命をかけて戦う闘士になっているが、成功を収めたリリアンのことも唯一の本当の親友として認めており、それを自分の成功のように喜んでもくれる。これこそ強い女性の生き方だ。自分がこれだけやってるんだから友達だったら当然私と同じ事をやれ。と言う押しつけがましいところが無いところも好感度は高い。

 彼女は自立している。だからこそ、最後に我が子をリリアンに託さねばならない時の本当に済まなそうな顔が映えるというものだ。これにはレッドグレイブのきっつい顔立ちが上手くはまってる。この人は役幅が狭いだけに、ぴったりの役に当たると異様なほどにはまる。

 一方、半分レッドグレイヴの引き立て役となってしまった感のあるフォンダ。これだけ個性が強く、普通だったら彼女の方がもっと表に出て良いはずなのに、流石のフォンダも引き役にしかならなかったようだ。

 いずれにせよ、この濃い女優二人にもうお腹いっぱいという感じ。

 本作で女優賞オスカーを得たレッドグレイヴはPLO支持者だったため、ハリウッドから徹底的に嫌われてたが、ジンネマン監督は製作会社の意向を無視してキャスティング。しかも製作開始ギリギリで選んだため、製作側が諦めたという経緯があり。更にアカデミー授賞式には会場周辺にはシオニストがデモを行っており、この年のアカデミー賞は稀に見る物々しさだったとか。更に受賞時のレッドグレイヴはシオニストを逆なでするような発言をしたとも。

 リリアン=ヘルマンは「マルタの鷹」で知られるダシール=ハメットの恋人であり、自身も優れた戯曲家。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。