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[コメント] 17歳のカルテ(1999/米)

オズの魔法使』が持つ力が現れてますね。やっぱり映画は素晴らしい!
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 日本でも最近になってようやく精神障害が一般的に認められるようになって、それまで苦しみ続けた人達をケアできるようになってきたのはありがたいことだ。

 映画には多く、精神病を題材にした作品というのはあるし、その役を演じることでオスカーを得た俳優も多い。役者として一度はチャレンジしてみたい題材なのかもしれない(数多くあるけど、病院を舞台とした『カッコーの巣の上で』(1975)(ニコルソン)や『レナードの朝』(1990)(デ・ニーロ)なんかが代表。他にも『レインマン』(1988)(ホフマン)、『シャイン』(1995)(ラッシュ)、『ビューティフル・マインド』(2001)(クロウ)なんかもあるし、アルコール中毒を題材とした作品もその中には入るだろう)。しかし、これまで女性を主題とした作品は目立ったものがあまり多くなく、しかもこれだけリアルな作品は珍しい。その辺はやはり実体験を元にしているだけのことはある。

 ただリアリティというのは、時として物語りそのものを平板なものにしがち(だからこそ、これを演じられる人は“実力者”と見なされるわけだ)。それで本作は若手の実力派女優を適材適所に配置している。

 ライダーは既に年齢的に17歳と言うにはきついが、それでも流石の貫禄の演技を見せつけていた。それにそれまでアクション女優としか見られてなかったジョリーを一躍演技派女優に出来たのが本作の最大の功績と言えよう。他の女優達も良い役割を果たしていた。多少学芸会のような雰囲気も感じられるものの、少女達の華やいだ雰囲気と、全く別のベクトルの重さを巧く見せていた。それを統括する立場にあったウーピー=ゴールドバーグも流石。

 ただ、ストーリー云々はあまり言うべき事がないのだが、本作には面白い部分があった。

 この病院で上映会が開かれるシーンがあったが、そこで上映されていたのは『オズの魔法使』だった。この物語は「青い鳥」の構造に結構似ていて、自分自身の中の足りないものを知ったキャラクタたちが冒険や出会いを通し、やがて答えは自分の中にあることを発見していく。見方をちょっと変えることで、今まで退屈きわまりない、あるいは自分に攻撃を仕掛けてくるとばかり思っていた日常が、実は自分を包み込む大切な空間であったことを知っていくことになる。

 それを観ることがスザンナの治療の第一歩となったというのが興味深い。良い映画はその中に人生を封じ込めている。それを見つけていくことが映画好きの醍醐味だ。改めて映画は素晴らしいものだと思う。

(評価:★3)

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