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[コメント] 真田風雲録(1963/日)

花と散るのが大好きな日本人のエートスを見事に剔出、全共闘暴力路線も特攻隊も同類と見事に証明しており、オモロがるほどに虚しさが湧き上がる。周辺人物の造形が意外な方へ走って分厚いのが大いなる美点。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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真田幸村千秋実は、「徳川の政治では息のつげないはぐれ者ばかり」勧誘。十勇士に「勝つ見込みはない」と断り、中村錦之助応えて「どうせ死ぬなら格好良く死にたい」。「誰もが太閤になれる時代はこれが最後なんじゃないか」と語られる序盤。これらの科白は子供の頃、NHK人形劇でも聞いた覚えがある(有名な「里見八犬伝」の次に放映された)。この有名作でもって、子供にまで特攻思想は擦り込まれたのだろう。

死者から武具盗む幼少時からの十勇士の活躍は安いセットとコメディ、人の心が読める錦之助と幼馴染の渡辺美佐子という東映伝統『紅孔雀』系。どもりの伊三常田富士男が時代。彼等より周辺人物のほうが面白い。

ミッキー・カーチスのギターの流しで始まる十勇士たちのドンチャン騒ぎは、特攻映画の前夜の無礼講と同じ構造があるが、そこに淀君花柳小菊が参入して説教してコーラス隊に讃美歌唄わせるのが印象的な断片。纏め役に過ぎないと詠嘆する豊臣家臣の大野修理佐藤慶は「浪人や百姓は謀反についていかなかった。叛乱成就が見てみたいが、そうなることはない」とまた詠嘆。この辺りも全共闘が愛した断片なのだろう。グレたお飾りの豊臣秀頼水木襄にも映画は花を持たせている。

10万の兵に対して敵は50万、籠城か出撃かの談判で真田は奇襲を提案して成功するが報酬も出ない。外堀埋める妥協案を呑むと内堀まで埋められて「和議は陰謀だ」で真田「最期を格好良く飾らせてくれませんか」大野修理「格好よくねえ」で夏の陣。ストップモーションの活写で討ち死に。美佐子は「お友達になって」と云われて仲間になった千姫本間千代子に救われるのもイロニーが感じられる。錦之助は服部半蔵原田甲子郎との対決に勝ってひとりどこかへ去るのだった。

(評価:★4)

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