[コメント] 荒野の決闘(1946/米)
ジョン・フォードにまつわるこんなエピソードがある。
戦争から復員したジョン・フォードは、すぐに「荒野の決闘」に取り掛かる気になり配役係に命じた。
「連中を集めてくれ」
「オーケー、ボス」
すぐさま、スタジオには連中と呼ばれる人々が集まってきた。ジョン・フォードが映画を作る噂が出ると、すぐフォードの許へ顔を出す男や女がいた。 彼らは台詞など、「ねぇお前さん」「何でぇ」という程度か、全く台詞なしの通行人だったりというエキストラだが、滑稽なことに彼等は、みんな自分がいないとフォードの映画が出来ないと信じ込んでいた。これがフォードの言う連中だった。 スタジオの連中が集まってきた。何年かぶりの再会だったが、照れ屋のフォードはろくろく挨拶もせず、昨日も会ったようにジロッと見渡したが、みるみるうちに機嫌が悪くなってきた。
「どうしましたか、ボス?」
「俺が久しぶりに西部劇をやらかそうというのにサムはどうした?フランクもいない、ジャックは相変わらず酔っ払って寝ているのか?」
配役係は答えた。
「サムはタラワで戦死しました。フランクはノルマンディーで片足失くしてまだ陸軍病院です。ジャックは痛風で動けません。かみさんが代わりに息子を寄こしました。あの右から3番目のイキのいい奴、ジャックにそっくりでしょう。あれが息子です」 フォードはしばらく空を見上げてから独り言のようにつぶやいた。 「そうだったか…戦争があったんだな」
連中がいっせいに砂塵を捲いて走り去ると、フォードはチェアに腰を沈めてまた繰り返した。
「そうだったな。長い長い戦争があったんだものなぁ…」
ある雑誌に載っていたものですが、フォードの映画を髣髴とさせるエピソードなので紹介しました。
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