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[コメント] 空軍大戦略(1969/英)

これだけ好き嫌いがはっきり分かれる作品も珍しい。ちなみに私は大好きな方。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 私はかなりの歴史オタクであり、更に軽度のミリオタの気があって、そういう意味で戦争を描いた作品がとても好きなのだが、そんな私にとって、何というか、凄く幸せな気持ちにさせてくれる作品というと、やっぱり本作を第一に挙げたい。

 ここで描かれるバトル・オブ・ブリテンとは、第二次世界大戦におけるドイツ電撃作戦を食い止めた初めての戦いであり、そのため重要な転換点となった作戦となる。これはとても重要な作戦で、イギリス空軍が水際でドイツを破り、英本土への侵略を防いだ重要な作戦だった。

 だけど、一見そんな重要な作戦を行っているように見えないのが本作の問題点だろう。話の大部分は密室での会議と怒鳴り合いで終わってしまうし、誰が主人公なのかも分かりづらい。

 何より演出的にダレ場が多すぎる。主人公が一定しない群像劇だし、しかもその大部分の会話が噛み合ってない。全員危機感を持っているのは分かるし、焦っているのも分かるのだが、何をやっているのか分からない。名優をこれだけ使ってこの程度?と思われる向きもあるかも知れない。

 ただ、それこそが本作を語る上で重要な部分でもある。この部分をどう捉えるかで本作の評価は全く変わってしまうだろう。

 これを単なるダレ場と考え、訳分からないと考えてしまうと、本作は分からなくなってしまう。

 一方、これをリアリティと捉えるならば、全く評価は変わる。

 この時、イギリス軍は一丸となってドイツからの攻撃を迎撃したのではない。実際には軍部内のドイツ評も一定せず、楽観論と悲観論がごちゃごちゃになっていたのだから。口から泡とばして自説を披露している人間だって、自分の言っていることが正しいのか分かってないというのが実状だったようだ。

 だから、登場人物がちぐはぐなことをやってることは、実際に行われていたことに近い訳だし、それで自分たちが何をやっているのか完全に理解していた人間はいなかったというのも事実。

 そんなイギリス軍が、(運もあって)見事ドイツ軍を撃退した。そのことを「奇跡」として受け止めることができたなら、この作品が本当に面白く感じてくるだろう。

(評価:★5)

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