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[コメント] ミッドナイト・エクスプレス(1978/米)

刑務所の悪臭が画面から漂ってきそうなまでの空気感を演出したのは見事だと思うが、作品の構成自体は非常に単細胞であると感じる。面白いが、人権の奪還の映画として観ることに、疑問が残る。
かねぼう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人が人を裁くことについての問題意識が根底にあるにもかかわらず、主人公の殺人を解放の象徴としてしか用いないところに嫌悪。

彼は麻薬を不法に所持しました→不当な判決を受けました→人権の侵害→彼は人権を取り戻すため、殺人を犯したりして刑務所を脱出しました→人権の奪還

この映画で観客に用意されている思考回路は、上記の物以外は十分ではない。確かに、彼が殺した人物は死んでも良いような人物であるかもしれないが、そもそもこの人物を“死んでも良いような人物”としてしか描かないことが問題なのだ。この内容において彼の殺人を問題にしない法があるだろうか?その問題を丸々看過できるような設定を持ってきたことに対して、非常に不満を感じた。

確かにこの作品には彼の主観的視点によって物語られており、その絶望感やそこからの解放感を味わう映画であると割り切って考えれば、非常によく出来た作品であるとは思う。しかしそうであるならばラストはもう少し脱獄のスリルを味あわせてほしかった。あまりにもあっさりしていたのですこしガクッときた。

つまりは娯楽映画としては中途半端な映画であると感じたし、何よりもこれを崇高なメッセージ性を持った映画として観ること関しては甚だ疑問であるのだ。

しかしこの映画のおかげでアメリカ・トルコ間の囚人引き渡し条約が成立したというのは、良かったんじゃないのだろうか。うん、良かったんじゃないかね。

(評価:★3)

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