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[コメント] 白人酋長(1922/米)

アクションやギャグのインパクトだけではない滑稽に対する繊細な観察力がものをいうSO-SO作品
junojuna

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 キートン独自の“笑い”の個性が如実に表れた繊細かつ手練な作品。パントマイムやスタントというアクションも然ることながら、“ズレ”や“飛躍”など、笑いを生むテクニックが細かくなっている点は要注目である。こうした文法の中で修辞するコミックツルギーを得て、キートンの知的な笑いが明確なスタイルとして定着してきている。キートン登場シーンでの昆虫採集をしに森に分け入るというキャラクター設定の妙。明らかにあのスタイルで昆虫採集とはまったくおかしな設定ではあるが、森に分け入ることを納得させるための方便としては充分な施しであり、その状況の“ズレ”が生みだす滑稽な空気感がこの作品の豊かさを支えている。キートンは昆虫を追いかけているのだが、インディアン達にはキートンが逃げ出したのだと見えて一斉にキートンを追いかけるという描写があるが、ここでカットはロングに切り替わり、一見、鑑賞者もインディアン達と同様、キートンがヤバい状況に気づき逃げ出したと思わせて、またスラップスティックな追いかけっこが始まるのだなと予想をさせて裏切るという、そのフレーム内での運動を一気呵成に提示する巧みな演出操作に、ただのファルスで終わらせないキートンの真髄を見た気がした。コミック力は平均的な結果であるが、映画力の顕在に感心させられる一作である。

(評価:★3)

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