[コメント] 肉体と悪魔(1926/米)
もうフォトジェニックな画面、ため息の出る美しいショットの連続。まずは、ガルボ登場の駅のシーン。ガルボは姿を表した途端に、くらくらするようなオーラを発散させる。ジョン・ギルバートが一目で参ってしまう圧倒的納得性。
しかし前半のハイライトは、ダンスパーティの最中、テラスへ出た二人が屋外のベンチに座り、真っ暗の中、煙草の光だけのローキーでキスするシーンだろう。続くガルボの邸宅での情事のカット、二人が横臥する様も見事で、このラブシーンの連打には鳥肌が立つ。さらに突然帰宅した夫が、ドアを開け二人を見止めた後ろ姿のショットで、ドリーの前進移動でその手に寄っていく怒りの表現に唖然とし、決闘の場面のハイキーの超ロングショットも、これも凄い表現主義的造型だ。といった、このあたりの超絶カットのつるべ打ちには唸るしかない。
中盤からギルバートの親友ラース・ハンソンと、その妹バーバラ・ケントとの四人の関係でプロットを構成するが、ラストに向かって登場人物の「温度」を表すように、雪と氷を使った見事な画面造型が展開し、全く飽きさせない。ギルバートとハンソンの決闘前の嘆き悲しむガルボとケントは、ちょっとこゝはサイレント臭い大芝居で、今見ると違和感があるのだが、瑕疵はこの部分ぐらいじゃないだろうか。全編、クラレンス・ブラウンとウィリアム・H・ダニエルズの才能に圧倒される。本作もサイレントの一つの到達点だ。
#恥ずかしながら、ラディゲの「肉体の悪魔」の映画化作品と、ずっと勘違いしていました。まったく別のお話でした。
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