[コメント] 風前の灯(1957/日)
これは良く出来たコメディ。肩の力を抜いた木下の良さが最大限に発揮された傑作。木下も不真面目にやると、こんなにいい、という例だ。『お嬢さん乾杯』と同レベルと云っていいんじゃないか。
カメラも素直なカットばかりでいいし、話の運びもとても早い。それに、全編の主要な舞台となる、若い泥棒3人が目を付けた家、その畑の中にあるロケーションがいいのだ。泥棒達と家の距離感の演出が良く考えられている。彼らが押し入ろうとしていると、多くの訪問者が登場し、出入りするのだが、その都度、まずは、ドアがゆっくりスライドされるカットがあり、その後で、思いもよらない訪問者を映し、観客を驚かせる。そして、その後の泥棒3人の位置が、納得性のあるクレバーな見せ方なのだ。
家の持ち主は田村秋子。その継子の佐田啓二と嫁の高峰秀子、二人の子供で小学校低学年ぐらいの男の子、という家族構成。田村と高峰の対決も見どころだが、子供に対する演出も上手くいっていて、田村と子供のやりとりが笑わせるのだ。そして、後半になって登場する田村の甥(だったと思う)、南原伸二(宏治)が別格の演技で存在感を見せつける。この構成のバランスもいい。
#備忘
・最初に下宿している蓮っ葉な女性は伊藤弘子。後に『関東無宿』のヒロイン。
・田村が新聞の映画案内を見ながら「…山節考…、悪魔のような女…」
・高峰と佐田の夫婦喧嘩のシーン、オフで若者たちの歌「おいら岬の…」
・タイトルの「風前の灯」自体が前作『喜びも悲しみも幾歳月』のパロディか。
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