[コメント] アルファヴィル(1965/仏=伊)
さて最期に何を唱えようか。
チープなディックやブラドベリを覚悟して観たら、リリカルなチャンドラーだった。50年代SFよりも、かなりハードボイルド小説のプロットへの近さを感じ、意外だった。更にバーバリーと思しきトレンチコート、銃身の短いピストル、特徴のある脇役の顔立ち、薄汚れたホテルとその壁など、画面のモチーフにも「それらしさ」が溢れている。
SFとしては全編これ「ミタテ」の数々。それぞれが本来は一体「どこ」なのか、「何」なのか、絶え間なく想像を刺激される奇妙な快感。特に知りたいのは、ラスト近くで、博士の後方に並んでいた機械類の正体。
ゆらめく裸電球にハードボイルドを感じ、整然と並んだ蛍光燈に近未来を感じる。一番の偏愛シーンは、途中の死刑。柔らかく波立つ水面のすばらしいうつくしさ。「顔」を無くす事で力を得て、他人を規定して殺す側にまわるより、自由に生きて正直で無防備に明らかな「自分自身」のまま、あんなふうに殺されるなら本望です。どのように扱われようとも、自らの良心になんら恥じる所はない。さて最期に何を唱えようか。
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