[コメント] 地獄の天使(1930/米)
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伯父の遺産が転がり込んで百万長者となったハワード=ヒューズが、自分の思いの丈をぶつけて作った渾身の作品。撮影には破格の金額を投資したことで知られ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ各国で第一次世界大戦で実際に使われた年代ものの本物の戦闘機を87機購入。4年の歳月と、撮影されたフィルムは225万4750フィート。公開プリントの249倍ものネガが使用されたという。まさに本当の金持ちの道楽として作られた事がよく分かる。この辺はヒューズの伝記である『アビエイター』(2004)に詳しいが、あれを観ても、意気込みは伝わってくる。実際ヒューズ自身も戦闘機に乗ってスタントを行ったが、コントロールを失い、墜落してしまったという出来事もあったが、それでも監督として最後まで撮影を続けたという(撮影でスタントが3人も死んだという話もある)。
で、映画としての出来だが、物語は第一次世界大戦におけるイギリスは絶対的に正しく、ドイツは悪い。という単純な勧善懲悪もので、演技も大げさだし、全然こなれてないのだが、それを補ってあまりあるのが空戦シーン。
既に『つばさ』(1927)という航空ものが既にあったが、それを観て衝撃を受けたヒューズが、これを超えてやる!という意気込みが伝わってくる。今の時代からすればさして難しい技術ではないとは言え、この時代に飛行機にカメラを積んでぶれないように他の飛行機を撮影するなど、もの凄い困難があった事だろうと思われる。しかもこれが今の目から観ても迫力がある。この空戦にこそ本作の神髄がある。
当時では始まったばかりのトーキー撮影(撮影途中で技術が開発されたため、完成途中でわざわざ作り直したという)。しかもパートカラーまで使うという凝りようで、本当に最先端技術を使ったんだろう事はよく分かる。
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