[コメント] ブロードウェイと銃弾(1994/米)
アレン本人が出ないアレン映画なのだが、主人公の劇作家ジョン・キューザックに対して、明白に自己投影したディレクションがされており、キューザックがアレンに見えて来る。多分その面白さも狙ったものなのだろうが、私にはウザく感じられる。
というようなこともあり、どうしたってキューザックの恋の行方以上に、チーチ、チャズ・パルミンテリの才能の開花、という部分が面白く感じられるのだ。ろくに学校も行っていないヤクザ、というかチンピラのパルミンテリが、プロの劇作家以上に斬新なアイデアを捻り出すことができる、という価値の転倒は、胸がすく思いがする。ただし、これとて、悪く云えば作劇臭いのだが。
他の俳優だと、ダイアン・ウィーストは安定した貫禄の演技だ。キューザックの告白を(喋りかけるのを)ことごとく止める反復が面白い。でもやっぱり、ヒロインは、ジェニファー・ティリーだろう。アレンらしいアホの造型だが、アレン映画ではアホこそヒロインなのだ。ティリーに比べて、トレイシー・ウルマンがあまり面白くなかったのは残念。
シーンだと、チーチが殺しで使う波止場のシーンがいい。ロングショットで発砲は見せるが、撃たれた人は見せない。2回あるが、いずれも、劇伴で「レイジー・リバー」が聞こえて来る。なので2回目も、シーン頭で事の次第が予想できてしまう、という部分で笑わせる。シンプルな演出だが、大きな効果を発揮する。こういうところは上手い。
あと、ゆるやかなズーミングのカットが数回ある。パンニングしながらのズーミング等で、いやらしくないものだが、移動が好きな監督なら、ドリーを使うだろうカットだ。コストメリットは大きいし、これはこれでいいのかも知れないが、こういう部分でも、画面は矢張りチープに見える。
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