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[コメント] 小説家を見つけたら(2000/英=米)

小説を題材にしてるのに、清々しいバディ・ムービーを見せられた気分です。キャラに合わせた描写が見事。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 世代と人種を超えた男同士の友情を描いた作品。

 引きこもり老人が青年に小説の書き方を教える。設定は一見して暗い話を想像するのだが、不思議に本作はそう言う暗さとは無縁。小説の書き方や技術云々というより、すがすがしいアクション作品を見せられているような気持ちにさせられる。

 老境に至った人間と若者との間の友情物語というのは実はかなりたくさん存在する。ただし、その大部分は物語の主題としてではなく、老人は良きアドバイザーとしての立ち位置を与えられる。この場合交流は一方的なものとなってしまうものだが、本作の面白いところは、これを一種のバディ“相棒”・ムービーとして作られているところだろう。いくら世代が違っていてもジャマールとウィリアムの二人の立場は対等。当初お互いの立場が全然違うことを互いに気付かず、交流の大部分は反発だけ。ただ“小説”というキーワードのみで結びついたドライな関係だったが、それが一緒に長くいることによって、徐々に互いを受け入れていく。ジャマールは単に小説の技法を学ぶだけでなく、孤独な魂を知ることによって小説家としての実力を得ていくのだし、ウィリアムは世界へと出る有機を得ていく。この辺の関係が徐々に変化していく過程を丁寧に描いているからこそ面白い。このパターンは実はそのまま刑事もののバディ・ムービーに完全に沿っているのが面白いところ。

 本作の最大の功労者はコネリーだろう。元々アクション畑の役者だからこそ、本作を単なる交流に留めず、相棒として成り立たせることが出来た。この人がこの年齢だからできた演技をうまく引き出せたことが本作の最大の強みではないだろうか。偏屈なスコットランド人はまさに彼のはまり役。それに対するブラウンも、新人ながらベテランのコネリーに一歩も引かずに渡りあっていた。キャスティングのはまり具合が良い。

 あとは物語全般にスパイスが利いてるのも特徴だろうか。小説が書けないのに評論しかできない人間に対する批判と批評家への皮肉も感じられる。このエスプリ加減が本作の強味。特に曲がりなりにも映画の批評なんぞしてる私にとっても、心にチクチクと刺さるところがあるので、ちょっと苦笑いしながら観られるのも良し。

(評価:★4)

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