コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] リキッド・スカイ(1982/米)

これは面白い!傑作と云うべきだろう。音楽もはじめは安っぽいと思ったが、慣れてくると、この演出によく合っていると感じてくる。
ゑぎ

 ペントハウス内の壁の能面風マスク。そのトラックバック。こゝと、クラブでダンスする若者をクロスカッティングする冒頭を見た時点、あるいは、蛍光灯みたいな飛行物体の出現シーンあたりでは、さすがに時代色が強すぎる、チープすぎる、と思ったが、だんだんとこの演出基調が面白く感じられてくるのだ。

 脚本兼主演のアン・カーライルは、マーガレットとジミーの二役。私はジミー役もよく似合ってると思った。ジミーがその母親でテレビプロデューサーのシルビアと会食するレストランのシーンだとか、メッチャカッコいい!また、もう一人、強烈な我がまゝキャラのエイドリアン−ポーラ・E・シェパードにも、ハマってしまったのだ。彼女にはクラブでの歌唱シーンがあり「Me and My Rhythm Box」という歌を唄うのだが、こゝもとてもいいと思った。

 その他の主要人物は、ヤク中でエイドリアンからクスリを買う男ポールとその妻キャサリン、ペルリンからやって来た科学者ヨハン、ヨハンの知人でマーガレットの演劇の講師でもあるオーウェン、階段でマーガレットをレイプするジャンキー男なんかが重要人物だが、全編ほとんど、二場面、三場面のクロスカッティングでこれら人物が繋がれているのも本作の特徴的な部分で、けっこうカッチリした作劇に思える。そんな中、終盤の、ペントハウスでの撮影シーン(沢山のスタフが乗り込んでくるモブシーン)では、他の場面とクロスカッティングされなくなるので、例えば、望遠鏡で窃視していた科学者とシルビアの出番は終わりかと危惧してしまったのだ。ところが、ちゃんと科学者にもシルビアにもラストで見せ場がある、という構成も良いところだろう。

 さて、マーガレットとセックスした男も女も、絶頂時になるとサーモグラフィ画面のようなエフェクトのかかった画像イメージが挿入されるのだが、輪郭が円形に収斂し、収縮して消えると死んでしまう、もしくは消滅してしまう、というチープな表現も、最初はゲンナリしたが、なんかどんどん楽しくなってくるのだ。この(頭にクリスタルの棒が刺さってる時点の)現象を見たマーガレットがルーフに出てインディアンの所為だと思う、ってのも面白い。また、エンディングの屋上でダンスするマーガレットのショットも見事な造型だと思う。今見ても、十分に楽しめる、力のある映画だろう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。