コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 新学期 操行ゼロ(1933/仏)

溶明する前に子供たちの歓声と歌声。ファーストショットは汽車の窓。コンパートメントの少年とその視線。向いの席で眠る男。
ゑぎ

 駅からもう一人少年が乗って来る。親指が取れるマジック。小さなラッパ。風船2つを胸にあててふざける。葉巻。煙が充満する。窓外も汽車の煙。冒頭は、ずっとサイレント演出だ。最初の発声は眠る男を見て「死んでる、ズラかろう」。

 駅に子供たちが集まっている。先生(舎監長?)の仰角。死んでると言われた男−ジャン・ダステは遅れてやってくるが、新人の舎監だった。冒頭の汽車の中も仰角俯瞰のカッティングが目に留まるが、以降も同様で、寄宿舎の中も教室内も校庭シーンも特に俯瞰の活用が実に効果的だ。

 本作を見るのは今回が多分3回目で、かなり若い時分にスクリーンで2回は見ており、名高い羽毛の中でのスローモーションシーンに関しては、5分ぐらい続いたような印象を持っていた。しかし、今回再見すると、このシーンって1分ぐらいじゃないか。いや、それだけインパクトのある演出なのだ、最初に無音のショットから始まり、やゝあって女性の歌声だけが入るという処理も美しい。

 また、新人舎監のチャップリンの真似だとか、小さな校長の面白さだとか、落書きみたいな絵が動き出すアニメーション処理だとかも記憶していたが、他にも魅力的な場面が多々あることにも気づかされた。例えば、序盤の夜の寄宿舎ベッドルームのシーンで、夢遊病のように歩き回る少年に対する照明の非現実的な造型。新人舎監は放任主義というか無責任な態度で一貫して描かれるが、中でも、生徒たちと町を歩いている際に一人だけ別方向に行き、女性を追いかける。生徒たちも一緒になって走る、という場面が可愛い。そして勿論、小さな校長に謝罪を要求されたユニセックスな少年ルネの決然とした態度がハイライト。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。