[コメント] 不敵な男(1958/日)
単なる太陽族映画かと侮っていたら見事にしてやられた。当時としてはかなり綿密な実地調査を要したろう新藤脚本は、今となっては珍しいものではないが、増村のドライ&ダイナミックな演出は新鮮さを失っていない。なんてたって野添ひとみのケリがスゲェよ!
この映画と『処刑の部屋』との差が即ち、増村と市川昆の世代の差なのであろう。明治維新以降巧みに隠蔽されて続けて来、また非文学的と軽んじられて来た”犯罪者の眼差し””悪の正体”を真正面から、同情も軽蔑もなしに、見つめ返した傑作。
赤線廃止直後の暗黒街を描いたことで溝口健二の遺作『赤線地帯』と連結する作品であるし(増村はこの作品で助監を務めているし、新藤は元々溝口の弟子だ)、黒澤明の『酔いどれ天使』『野良犬』を一歩推し進めた作品であるとも云える。(それは左翼的啓蒙主義からの脱却を意味する大きな一歩である)。カミュの「異邦人」に本当の意味で追いついた最初の日本映画とまで云ってしまったら大袈裟過ぎるだろうか。
「俺は10年早過ぎた」
増村のこの有名な呟きは本作に対する不当な評価に対するものではなかったか。
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