[コメント] 妖怪大戦争(1968/日)
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古代バビロニヤのウル遺跡の真面目な美術がすごい。盗掘が吸血妖怪ダイモンを目覚めさせて、妖怪はオランダとの交易船に乗って来訪、60年代では稀なことに善人で登場する代官神田隆を殺して化けて神田はやはり悪人化。庭で影のように佇み、吠えまくる飼犬を一刀たたき斬る狂気がもの凄い。不浄なものは取り払うのだと神殿と仏壇ぶち壊し、騒ぎに目覚めた剽軽な造形の河童の目には神田は妖怪。左平次木村玄殺して首から血を啜り、すると木村も神仏の撤去始める。河童はおいらは屋敷の主だと襲いかかるが一蹴され退却。皿を攻撃している処を見ると河童のこと知っているらしい。
助けを求めた日本の妖怪たちは、そんな妖怪は妖怪紳士録に載っていないから夢でも見たんだろうと疑うが、護摩焚く坊主内田朝雄はなぜか知っており、護り札と燈明で対抗せよと甥の家臣青山良彦に指示。燈明が神田の部屋囲んで灯され、内田はもの凄い形相で怨霊退散と祈りまくるが神田が杖振ると蝋燭は消えて内田は内田らしく死去。
若い血もほしいのうと所望する神田に指示され木村は町人の子供襲う。このデブの子と妹がいい。日本の妖怪に助け求め、正体知った面々の「のさばらせたら日本妖怪の名折れ」なる動機はソフト路線のパトリオティズムを想わせる。そしてまず部下たちを驚かしまくり、子供を襲うなと説教するのはテレビ版で丸くなったゲゲゲの鬼太郎路線。
妖怪たちは屋敷に捕えられた子供らを救出に向かう。ダイモンに巻きついて首を結わえられるろくろ首毛利郁子が哀れでよく覚えている(田舎だから判らないが封切りなら4歳)。あんなされたら困るだろうなあと記憶に残ったのだろう、初戦敗退、再戦に挑む彼等が内田の御札で壺に封じ込められるのに仏教批判があるのが興味深い。よく判らないが。青山は内田の与えた弓で神田の片目を射て、神田は死ぬがダイモンは抜け出して新代官に化けてアイパッチして潜入、さっそくに青山を死刑宣告するのがまた凄い。嘆くフィアンセ、神田の娘の川崎あかねは壺入りを逃れた二面女行友圭子に乞われて封印解き、全国の妖怪が集められる。後頭部に長鼻の顔下げた二面女は印象的で、時代の女性認識なのだろう。
全国の妖怪がまさに百鬼夜行で行列して集合。この描写も覚えていた。鉢巻しているのが百姓一揆を彷彿とさせる。唐笠お化けにぶら下がって空飛ぶ油すましが巨大化したダイモンのもう片目を射て一件落着。お化けは死なないという科白があったから誰も死ぬ訳ではなくダイモンは退散。百鬼夜行も引き揚げ、「日本の妖怪が勝ったのよ」「二度と戻ってくることはないでしょう」と川崎と青山は総括するが、それでは屋敷の主の河童はその後どこに住むのだろうと疑問が残った。数奇なフィルモグラフィーを持つ川崎あかねの運命のデヴュー作。ナレは戸浦六宏だが本人が妖怪で出たらいいのにと思った。
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