[コメント] 任侠外伝 玄海灘(1976/日)
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本作は音楽が実に堂々としており、グロい画面との緊張感があり、辛うじての綱渡りのようなバランスがある。在日コリアン関連は、不思議とフカサク『くちなしの花』も同年製作だ。
安藤昇がメインで、四半世紀前と現在が交錯して描かれる。51年釜山。「戦争の後の遺体をかき集めるんです」。死体に下げる鑑札がタイトルほかで象徴的に使われる。ヤクザの宍戸錠と押し入った民家で強姦して女殺した記憶。彼等は常田富士夫が組合長している国鉄(革マル)の組合にやたら絡んでいる。スト中止で暴れている。ストで儲け話があったのだろうが詳述されない。
血液銀行で血を抜かれ過ぎて町で暴れたり、警察で便所の水なめたり、ヘドロを泳いだりの根津甚八は李礼仙救う。李の片言の丁寧語がいい味がある。母と娘の二役。大村行きと云われて「それじゃあ世の中、真っ暗闇じゃありませんか」という丁寧語。まだ死ねんと蓋蹴とばして棺桶から出てきて、安藤追って海に飛び込み、宍戸から逃げて窓から飛び降りる。
買われてきた娘は入浴中、父の安藤を見て(なぜ安藤を知っているのかよく判らないが)裸で雨の中を逃げ出し、盲目の僧侶が托鉢する。根津を訪ねて警察へ乱入。彼女がストリップする小屋の客との乱闘がよく撮れている。最期は川の真っ黒なヘドロのうえに仰向けになって死んでいる。
えげつない描写がとても多い。切った爪が食い物に飛び込むとか手術中に大腸引きずり出して元に戻すとか、ゲロとか食い物に沸いている蛆とか。黒眼鏡かけた小松方正(李礼仙の夫)も哀れ。難破船のなかで安藤昇からナイフで銃弾抉り出しながら彼の過去を思い出させ、麻酔なしの手術は血が噴き出る。
根津が警察から逃げて飛び込む町中の小さな川がいい。ああいう川を近代は全部暗渠にしたのだろう。安藤が杖ついて行く海岸の海は(色調整のためか)エメラルドグリーンでとても美しい。宍戸を殺してから唐十郎に撃たれて耳から流す血の毒黒さととても対照的だ。彼に李礼仙も最後に殺される。
舞台は下関。あの町にはコリアン街がある。散歩したことがある。唐プロとATGの提携作。ドドンパリズムの主題歌がいい。「夢は俺の回り灯篭」。唐十郎作詞で作曲は不詳。クライマックスで安藤唄うのは「黒犬」。
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