[コメント] クイルズ(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
それぞれの俳優の演技は素晴らしかったし、ストーリー展開は常に観る人を飽きさせず、映像も綺麗だった。エンタメ作品として観るなら、完璧に近いです。
ですが、キリスト教を絡めてサドを描くなら(どう描いても多かれ少なかれ絡んでくる気もしますが)彼の思想に軽くでもいいから触れておかないと、「サドの著作=エロい=反キリスト」とだけ受けとられかねない(というかサド知らない人はそう受け取ってると思う)し、死ぬ前すら十字架に口付けしようとしなかったという彼の執念が理解しにくい。この映画だけ観て、何故十字架に口付けしなかったのか、と考えても、エロ本が書きたかったからその執念を貫いた、としか思えないのでは? サド=エロいおっさん、というのは誰もがなんとなくは持ってるイメージだからこそ、そうではない部分を描いたほうが面白かったのではないかな、と。
確かに思想まで掘り下げると2時間でまとまらないとか、サドを知らない観客がついてきにくくなる、というのはあるでしょうが、例えば本の朗読シーンで少し触れるだけでも違ったと思う。サドの著作を実際に読んだことのある人からみたら、あれだけ朗読シーンがあるにも関わらず彼の思想に触れる文章が全く取り上げられていないのは、不自然に感じます。
なんだかんだいって面白く観られたのですが、思想に触れていたら、その思想に対する執念が創作という形であらわれる、というかんじでもっと面白い映画になっていたと思うので残念という気持ちが強いです。創作に対する執念をあれだけ上手く描いておいて、その原動力がただのエロです、で終わっちゃうのは本当にもったいない。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。