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[コメント] エドワード・ヤンの恋愛時代(1994/台湾)

黒地に白文字の警句や科白の断片のインタータイトル(挿入字幕)が何度も出る(英訳した文は赤文字)。非常に重層的な設定で、多くの人物がその関係性や心持ちを変化させる群像劇だ。やっぱり圧倒的な面白さ、満足感が得られる映画だと思う。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ちょっと私の感想もいつもとは変えて、人物紹介に織り交ぜたコメントを記載する。結構、後半の状況にも触れるので、以下にはネタバレも含みます。

◎バーディ:売れっ子演出家。本作のファーストショットは、彼の走るローラーブレードの足のショットから。打ち合わせというか取材か。皆着席しているのに、取材されている彼はテーブル席の周りを回っている。後半、助手の女性と関係していると分かる。フォンへは役を与える代わりに関係を迫る(ように見える)。

◎モリー:CMやドラマなどの制作会社社長。バーディ、チチ、ミンの高校時代からの同級生か。婚約者はアキン。モリーもアキンも財閥の出身(家がお金持ち)。モリーの姉は女優か。この姉もアキンの婚約者だったが、小説家と結婚した。

◎チチ:モリーのアシスタント。八方美人と思われている。女優でもあり、CMに出演したことがある。本作の主人公を一人選ぶなら、チチだろう。彼女にはコメディパートは全くない。

◎アキン:モリーの会社の出資者でもある。西安出張中に、モリーの男性関係の噂を聞き、ヤキモキする。会社社長とは思えない幼稚なキャラで、完全にコメディパートだ。テレビ局まで来て、バーディを殴る。だが、終盤では、バーディと意気投合して、一緒に芸術をやろうと云う。バーディの助手に恋をする。純真な人物でもある。

◎ラリー:アキンの会社の会計士?経理部門か。周囲には隠しているようだがフォンの恋人。一緒に暮らしている。モリーにも気があるのだろう。アキンが心配しているモリーの相手は噂でバーディだと決めつける(だから、アキンはバーディを殴るのだ)。

◎ミン:チチの婚約者。役所勤め。モリーとは高校時代からの知り合い。終盤でモリーと関係する。母親と暮らしている。叔父さんがラジコンに凝っていたりする面白い人。別居している父親はレストラン経営者。父親の今の妻だろうか(皆がオバさんと呼ぶ)女性とも良好な関係。

◎フォン:モリーの会社の女優。ラリーとの関係がモリーにバレて、クビになる。ミンの同僚に誘われて、クラブでキスする場面があるし、その帰りに、ミンを誘惑するが未遂に。また、バーディの芝居の稽古に現れて、バーディから云い寄られる。このようにプロットをかき回す役割を担う。

 とりあえず、若手の登場人物だけを、ちょっと登場順を意識して列記した。上の記載の中に少し触れているが、モリーの姉や、その夫の小説家だとか、ミンの父親の関係者でオバさんと呼ばれる女性なんかも、重要なキャラクターだと思うが、列記からは割愛した。

 本作も後半になって立て続けに良いシーンが畳み掛けられる映画だと思うが、例えば、ミンが帰宅すると、モリーがいて、モリーはミンを打つのだが、しかし二人ともチチのことを思いながら、次第に抱き合う路地の場面。あるいは、暗い小説家の部屋。携帯電話を取りに戻ったチチに、小説家は云い寄り、逃げるチチ。この後、チチが乗ったタクシーと小説家が激突する場面。これなんか、本当に面白い!他にも、早朝のモリーの会社にチチが来るシーン。窓際にモリーがいる、ローキーの画面。そして、ラストのエレベーターの中から撮ったショット。チチと別れたミンが、長考し、多分、追いかけようと考えたのだろう、ドアを開けると、そこにはチチがいる、という呼吸の素晴らしさ。やはり、良いシーンは多くはチチにまつわる場面であり、やっぱりチチが主人公と云うべきだろう。

(評価:★4)

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