[コメント] もののけ姫(1997/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
数回目の観賞にしてようやくコメント、レビューが書けるようになった。やっとこの作品がわかったような気がする(以後すべておいらの憶測)。
宮崎さんがこの作品で引退宣言をしたのも解る。この作品で彼は観客の事を考えてなかったのではないだろうか。
やっと本当に作りたい作品が出来たのだろう。ナウシカから変わらない、一貫したテーマ「人間と自然」。変わらないのは当然である。それこそが彼の本質なのだから。映画作家としての彼の源なのだ。このテーマに悩み、苦しみ、もがいてきたからこそ、彼は作品を作り続けてきた。そして解った事は「答え」など無い。最初からわかっていたはずだが、それでも探し続けてきて出た結論がこの作品なのだ。
自然を守る神、自然を侵す人間。どちらも悪ではない。互いに生き残る為に必死なのだ。だからこそ答えは出ない。作中、大きな問題を提起しておきながら、ラスト結局答えを提示しないまま作品は終わる。当然答えなど出せない。自然が無くなるか、人間が居なくなるか、しかないのだ。どちらも選べるはずが無い。
観客は彼に、大人も子供も楽しめるアニメーションを求め続けてきた。それに答えようと作られた過去の作品には牙がない。もちろんそれが悪い事では決して無い。自分も今作以前の作品が大好きだ。ただ彼の本質はそんなになまっちょろいもんじゃない。一人の表現者として、とことんまで己をさらけ出してやろうと今作を製作したのだろう。そうすれば当然子供には理解しきれない話しになる。大人には重い話しになる。商業的な成功は望めないかもしれない。観客に理解してもらえないかもしれない。でも彼が本当に表現したかったのはこの作品なのだ。
映画とゆう一つの娯楽において、観客を無視するとゆうことは映画監督として失格かもしれない。だが一人の表現者としては、とにかく己の思うままに全てをさらけ出したいのだろう。それこそが表現者としての一番の目的でありエネルギーなのだ。だから映画監督を引退するとゆう発言が出たのだろう。それだけの覚悟をしてこの作品で己を貫き通したのだ。そこに真の宮崎駿が見えたように思う。悩み、苦しみ、もがいてきた彼自身が作中に溢れている。この作品ほどに監督自身をさらけ出した映画を見たことが無い。
映画として正しいかはわからない。ただ、一人の表現者の作品として、これほどまでに力強いものはみたことがない。そのエネルギーに圧倒され、こちらから抵抗するすべなどまるでなかった。ただただ宮崎駿を見せつけられた。そんな己をさらけだした、丸裸な、力強い作品が好きでしょうがない。その圧力に押しつぶされる感覚が好きでしょうがない。
あまりにも力強い彼に、彼の本質に怖ささえ感じる。そんな人が全力を注いだ作品だ。こちらから何を言えようか。観客の評価など、どうでもいい。この作品を彼自身がどう思うかが大事なのだ。そしてこの作品こそが彼にとっての最高傑作なのだ。であるから一人の観客である自分にとっても、当然この作品こそが最高傑作なのである。
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