[コメント] ユマニテ(1999/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
辞書をひくと英語のhumanityは 1人間性 2人類 人間 3人間愛・慈愛とある。(研究社) それにたいして、フランス語のhumanité は 1人類・人間 2人間味 人情 3人間性である。(旺文社) 第一義が「人間」であることに注意しよう。
要するに、この映画のタイトルを「人間性」と理解してしまっては、 作品を理解し損なってしまうように思う。 生物学的な人類・人間といった意味から、文化活動を営む人間、 人間性、人間愛にまで拡大していくような、守備範囲で理解しなければ ならないだろう。
したがって、性器をさらけだすのも、放尿シーンも、性行為も 肉のたるみもそれが「真実」だとのべてはいない。 それが人間のすべてだとものべていない。
主人公が見続けるのは、「人間」であり「人間性」で ある。その汚らわしさと、愛おしさにかれは向かい合い続けているのだ。 例えば、海岸で燈台(だった?)を訪問するシーン。人間の歴史性と 野生とを対比させる意図がみられよう。 植物や豚がなぜ登場するのかも、あくまで人間への対比としてである。
主人公の行為は、それらすべてに向かい合う、というのみである。 「向かい合う」=「見る」ということに、この作品のスタンスが ある。解決は一種の「慈愛」というありかたのほか ありえなかったわけだろう。
こういったあり方で「見る」ということにこだわった点で、実に 西洋的な、西洋的としかいえぬものが、この作品にはある。 すべてを意識しようとする立場は、確かに哲学的ではある。 (が、それだけが「哲学」ではないし、個人的にはこの映画に 文学性を感じても、哲学は感じない。) だが、そのことで逆に、逃している点。強引な人物の設定が 違和感をあたえる点などが指摘されるかもしれない。
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