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[コメント] ビー・バップ・ハイスクール(1985/日)

原作の人気の基盤であるヤンキー文化の裾野の広さと、東映の誇る偉大なる歴史。その二つが映画のグズグズさを補って余りあったため、何だかどうにか納まってしまいました。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 振り返って考えると、僕ら世代の男子中学生の日常生活は、おニャン子クラブとビー・バップ・ハイスクールのみで構成されていたような気がします。要は「お前のボンタンすげぇなぁ」「特注だよ」「すげぇ!」「あ、5時だ。夕焼けニャンニャン始まるから帰らなきゃ」「あ、俺もー」。そんな毎日だったってことです。だから当然僕らがこの映画を観ないはずもなく、観た以上ハマらないはずもありません。

 でもですね、正直なところ映画としてはちょっと難ありだったんですよね。演技は誰も彼もがコント並だし、ところどころ明らかに変な間が空く。例えば金ちゃんたちに鬼太郎の着ぐるみを着せてみんなで笑うシーン。例えば順子が部屋に怒鳴り込んでくる直前の、脱力したヒロシとトオルのアップのシーン。例えば今日子の家でしつこいくらいに郷ひろみを歌い続けるシーン。2、3秒で構わないようなシーンを、何故だかこの監督は5秒とか10秒とか流したがる。その瞬間スクリーンとこちらにダラダラーっとした変な空気が流れるんです。男心をかーっと熱くさせようって映画なんですから、それはもう致命的ダメさなんですよ。さすが20年後に『デビルマン』を撮ることになる那須博之です。

 だけどねぇ、僕らの脳内には常に原作のマンガがあるんですよ。だからトオルもヒロシも前川も菊永も、勝手にこの脳内マンガが補完しちゃうんだ。いくらあちこちがグズグズでも、原作の面白さがそれに目を瞑らせちゃうんだ。これはこの作品がかなり得をしている部分なんですよ。原作が肩の力の抜けたヤンキーマンガだったから、映画化した時に「こんなの違う!」ってズレが少なくて、むしろ映画を助けてくれてるんです。

 更に改めて見直してみて気付いたのですが、「イケイケ主人公の楽しい日常」→「強烈な悪役にやられてヘコむ主人公」→「遂に大事な人までが敵の毒牙に」→「義憤とともに立ち上がり、殴り込みを決行!」というのは、鶴田浩二高倉健若山富三郎梅宮辰夫も通ってきた、我が東映の誇る「黄金の男汁映画プロット」なんですよ。

 しかも『仁義なき戦い』などで多様される「燃えるフレーズ」までもが、今作にはしっかりと投入されています。「吐いたツバ飲まんとけ」「気張り過ぎてクソ漏らすなよ」等、男ならいつか使ってみたい決め台詞が、満載とはいかないまでもあちこちに登場してくれるわけです。

 つまり今作は『ビー・バップ・ハイスクール』の体を為しつつも、「東映の王道」をキッチリと踏襲しているってことなんです。そりゃボンクラは燃えるはずです。結果公開当時は予想以上のヒットを記録し、後に6作まで作られる人気シリーズとなるのですが、それは正に「原作の地力」と「東映の歴史」に裏打ちされたものだったんだと思うわけなのです。

 その他見所としては、

・敵役ヘビジにVシネの帝王小沢仁志がいてちょっと驚く。

清水宏次朗は叩き上げなので、当時からアクションが結構イケる。

・素人オーディションからの抜擢ながら、立花商業の菊永はベストキャストだと思う。

中山美穂のブリブリな私服は何だか気持ち悪い。

・ていうか今日子役はやっぱり小泉今日子にすべきだと思う。

(評価:★3)

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