[コメント] 天空の城ラピュタ(1986/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
なんといっても圧巻なのが冒頭のシーンである。海賊数人が飛行艇に乗り込み、占拠する。しかも見たことの無い乗り物と見たことの無い武器を使ってである。そして宝石を奪おうとしてそれを守ろうとしたシータが飛行艇から地上に足を滑らせ落ちる所からオープニングが始まる。 私の書いた稚拙な活字にして既にこの緊張感である。
今でこそ冒頭に魅力的なシーンを使い観衆の心を惹く手法は当たり前のように使われるが、この時代で既にこれである。今見直してもこのシーンの創りのよさに涙がでてくる。
しかし冒頭に力をこめた作品というのは中だるみするのが常であるが、この作品はそうではない。
その後も、一人暮らしのトランペット・列車を使ってのカーチェイス・地下炭鉱での冒険・パズーの投獄そして前半のハイライトであるロボットが要塞で暴れるまでの間も息を飲ませる間も与えない。当然、冒頭からの緊張感はいまだ衰えることはなくストーリーも起伏に富んでいる。その間も細かなディテールまでこだわりを忘れていない。一人暮らしで屋上にハトを飼っている魅力的なシュチュエーションは、全ての人の子供心をくすぐるんではないだろうか?
後半での海賊船の船員になり、サイドストーリーとも思える海賊船の監視所でのパズー・シータの語りから、監視所がミニ飛行機にかわり、竜の巣へのアタックへの一連のストーリーの滑らかさは宮崎駿も自画自賛したのではなかろうか?
そして題名が示す天空の城ラピュタがいよいよ登場するのである。 既に映画としてラピュタが出てくるまで充分に盛り上がっているにもかかわらず、また新たな世界が目の前に広がり、探検が始まる。 そしてムスカの世界へ向けての先制攻撃が始まるわけだが、ここでも軽く旧約聖書を引き合いにだすことでストーリーに重みを出すわけだ。(現在では使い古された感がある)
ラストにまたもや圧巻なのが、滅びの言葉を唱えた後のラピュタの崩壊である。 ラピュタとロボットが崩れていく様は、この時代ではCGではとても映像化できるものではなかった。アニメだからこそ映像に限界がなく表現できる瓦礫の崩れる粒の数である。 これこそ宮崎駿の世界の映画へ向けての先制攻撃と感じる。
パズーの勇気、シータの決意、ドーラの人間性、そしてムスカの悪。 こういった分かり易い登場キャラの魅力がこの厚みのあるストーリーに加わるわけだ。
映像・ストーリー・キャラ・音楽、全ての融合がこの映画を揺ぎ無い高いところへ押し上げている。
天空の城ラピュタに死角なし
ずっと見つづけてきた結論はここに達すると思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。