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[コメント] アモーレス・ペロス(2000/メキシコ)

犬を殺す犬と神になれなかった人間。(再見につき、コメント変更。8/10/04)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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飼主に愛情を向けられることのなかった犬は、自らの命の危機に瀕したときに初めて殺しを経験した。その後、闘犬の場で自分の命を狙ってくる他の犬を殺したとき、人が喜び、自分に愛情を傾けてくれることを知った。殺すことで人から愛される、それから犬はひたむきに愛情を求め他の犬を殺していく。そして、仲間を全部殺してしまった犬はただそこに呆然と佇む。

神にでもならない限り、先のことなんて何一つわからない。ゆえに人も他者を省みず、ときには相手を抹殺してまで目の前にぶらさがった愛―それは欲望にすぎないのかもしれない―を求めようとあがき、やがて独りになる。神になれなかった人間の嘆き。これは三つのエピソード全部に共通する。

設定は優れていると思うが、俗物的なストーリー運びにはやはり若干の疑問を感じる。もっと各登場人物が激しくぶつかりあってほしかった気がする。他方で、ここまでやればたいしたもんだという気もするので評価を変える。(★2.5→★3)

*他の方も指摘されていたが、私もタランティーノよりもキェシロフスキの『デカローグ』やトリコロール三部作に近いものを感じる。しかし、本作には『デカローグ』の各エピソードに登場する「あの」男の視線が存在しない。誉めるでもなく、かといって罰を与えるでもなく、ただ事態の推移を見守る冷徹な視線の不在。

(評価:★3)

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