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[コメント] ピアニスト(2001/仏=オーストリア)

自己崩壊(2003/02)
秦野さくら

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分の中の本能みたいなものを抑えれば抑えるほど、その抑圧された部分は歪んだ形で表出するのかもしれない。彼女みたいなピアノ弾きならなおさらそうなのだろう。自分のなかに作曲者の魂を宿して演奏する、それは自分の感情を殺すことなのか。そうやって、幼い頃から躾られた彼女は、ある種歪んだ性癖の持ち主となってしまったのか。

「感情」を嫌い「理性」を信じる彼女の前に現れた攪乱子=彼。

逃げても逃げても執拗に追ってくる彼。彼女はそこで気付いてしまった、今まで抑え、逃げてきた自分の中にある本能に。

性を客観視し、自分の体を客観的に弄ぶ(and制圧する)彼女の性癖が「理性」だとしたら、彼との出会いで勃発した性欲は「本能」か。「理性」と「本能」のハザマでギリギリ自我を保っていた彼女だが、次第にそれは崩壊していく。

逃げているのは彼からではなかった、自分自身からだった。

崩壊からの自衛本能。

しかし、その存在を確信し、それに支配され始めたことを悟ったとき、彼女は自分を殺した。

自分の感情の源泉を、自分の手で。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)半熟たまこ[*]

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