[コメント] 害虫(2002/日)
100年前に撮られた映画なのかと錯覚してしまうぐらい圧倒的な映画としての風格に満ちている。邪悪なもの以外撮る価値など何も無いという確信。あまりの恐怖に涙が出てきそうになった。何だこれは。俺は何を見せられているんだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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サチ子が映っている。恐ろしい。なんでそんなものを撮るのか。サチ子には意見なんて無い。だから話さない。この映画の中で言葉を発している(つまり意見を表明している)やつは全員邪悪な人間だ。意見というものはすべて邪悪なのだ。サチ子は意見を持たないにも関わらず邪悪だ。孤独だからだ。孤独とは邪悪なのだ。意見を粉砕するものなのだ。では邪悪でないものは?善はどこに存在する?善とは奇跡だ。ギリギリなんとか会話やコミュニケーションが成り立つこと。そのときかろうじて善らしきものが、死から遠いものがあるように見える。だが次の瞬間にはそんなものは消し飛ぶ。邪悪のほうがずっと強力なのだ。害虫とはサチ子のことだが、害虫は世界そのものだ。社会の周縁に目を移したり、あるいは人間を(自分をでもいい)少しばかりじっくり見てみるとそこに害虫がいる。我々は自分の邪悪さを許せぬまま彷徨うしかないのだ。ああなんてものを見たんだ。にも関わらず、極めて不本意ながら、この吐き気がする映画で癒されている自分を発見してしまう。この映画を見ているとき、邪悪なのは自分だけではないと、害虫は自分だけではないと安心できた。しかしそんな安心など紛い物だとこの映画は突き放す。大概にしてくれ。文句なしの5点。今ままで見た映画の中でベストの1つ。原始的な映画の魅力が満ち溢れている。
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