[コメント] パニック・ルーム(2002/米)
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故・金丸信も、自宅の金庫に割り引き金融債を隠し持っていた。洋の東西を問わず、守銭奴の考えることは同じである。・・・というふうに観る映画ではない。
しかし"パニック・ルーム"が「誰も外から入り込むことは出来ない」環境を実現しているのであるなら、もっと居住に快適な空間に、つまり家全体を"パニック・ハウス"にしてしまえば、すべて解決である。
それではお話にならないし、費用と効果の兼ね合いを考える必要もあろう。映画の中で描かれるように、賊の侵入に気づかず、ルームの外ですやすや眠っていたのではまったく意味がないのであるから、独居老人の住まいであったことも考えれば、寝室全体をパニック・ルームにしておけば充分だった。本来は無断侵入者を知らせる警報システムと連動する作りであるはずだが、どう考えても、パニックルームの中で警報音を聞くのが、最も安全である。
そうなっていないのは、設計させた者の意志が働いているからである。つまり、このパニックルームは、隠し部屋として存在することに意義がある。したがって、あんな露骨に監視カメラが取りつけてあったり、不動産屋までが存在を知っているのは、ちょっとした矛盾である。まあ、カメラの問題はともかく、少なくとも設計し施工した会社があるわけだから、不動産屋が知っていたことは良しとしよう。都合よく隠し金庫の存在だけ知らなかったことも良しとしよう。
以上のことは、映画の冒頭の数分でわかることなのであるから、あの家に住むことになった親子二人、メグ(ジョディ・フォスター)とサラ(クリステン・スチュワート)にも、当然分っていておかしくないことである。
したがって、賊が侵入してきた時点で、否、少なくとも間一髪パニックルームに逃げ込んだ時点で、冷静に考えれば、彼らの狙いはまさにこのパニックルームの中にあるのだということ、そしてこの部屋の中に隠し金庫のようなものがあるのだろうということに気づくのが、論理的帰結である。
いずれ二人がこれに気づくであろうことは、賊にも分ることであるから、もし、頭のいい連中であったなら、(まず監視カメラを壊したうえで)次から次へと息つく間もなく攻撃を仕掛け、恐怖を与え、パニックに陥らせることで、考える余裕を生じさせないようにしたことだろう。
その意味で、この映画の魅力の一つは、攻める側も守る側も等身大の素人で、同じレベルの素人同士が知略を尽くしてする攻防の駆け引きにある、という点は否めない。
しかしながら、観ている間は以上の点にはまったく気づかず、ジョディと一緒になってパニックしていた。引越し当夜に泥棒が入ってくる展開には、身も蓋もない無駄の無さだとむしろ感激していたくらいだ。
一番頭がいいのは、息つく間も無い展開で観客を引きずり回す、この映画を作った人たちだ、ってこった。
80/100(02/09/01見)
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