[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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評判は耳にしつつも何となく先送りにしていた本作。「重たそう」という印象があったので、心してかかった。ビデオテープを差し込む手がちょっと震えたりなんかした。
ストーリーは定番の「巻き込まれ型」ながら、わけもわからずに状況に巻き込まれる人物が単体じゃなくて、マーと花屋という2人に「巻き込まれ」シチュエーションが与えられているという構造がまず面白い。しかもマーの当面の行動原理は花屋たちの隠匿という「現状維持」に務めることであり、一方の花屋は「死にたい」→「逃げたい」と変化してゆく。この花屋の変化をマーはすべて押さえ込まなければならないため、マーに与えられたミッションも刻々と変化してゆき、物語の展開に加速度を与える。
さらにマーを妨害したり後押ししたりする村人の存在も、物資の不足という状況もあって、充分にマーの行動に対する拘束力が効いているし、何よりマーと花屋の意思の疎通を司る通訳が嘘つきであるという設定が2人の感情を見事にコントロールしているのでストーリーテリングが一本槍にならず、見る者を飽きさせない。
ここまででも、設定段階から非常に練りこまれた見事な脚本だと思う。
そして後半では2人に「わけがわからない状況」を与えた「皇軍に支配された国」という、ストーリーにおける絶対的なバックグラウンドが崩壊する。物語は一度マクロ規模でダイナミックにひっくり返り、その大状況の変化はラストで再びマーと花屋の個人的な関係性に帰結する……うはぁ、面白いよコレ!役者の演技もカンペキ!
たぶんこの作家は香港か上海あたりの一流企業を舞台にして、ハイソなメン&ウーメンを主役に三角関係を描いたラブコメなんかを作らせても、きっと面白い映画を撮るんじゃないかしら。あの真っ赤なエンドロールを眺めながらそんなことを考えていた私は不謹慎なのだろうか……。うーむむ。
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