[コメント] 魅せられて(1996/英=米=仏=伊)
《美》に溺れて周りがよく見えなくなったベルトルッチ。
とても映像に凝っている。殆ど全てのシーンに「こだわり」を感じた。綺麗で非常に繊細。否、豪奢といったほうが相応しいかも。ヨーロッパ−イタリア−の都市化のあまり進んでいない片田舎、芸術家の住処という舞台設定を生かしきれている。風景+美女リブ・タイラーも相乗効果がある。
ベルナルド・ベルトルッチの映画は概ね映像的「美」意識の強いものが多い。『ラストタンゴ・イン・パリ』然り『革命前夜』然り。この作品は彼のある面で集大成のように感じられた。
ただ綺麗と美しいは異なる。私はこの綺麗さを「小奇麗さ」と捉えた。つまり綺麗さと同等の美しさ−内面に響いてくるもの、一つの意味では−を見出せなかった。物凄く「ミュージッククリップ」に似ている印象だ。映像が極めて現代的ともいうべきか。とりあえず表層的には満点の映像だけれども、それを超えて刺さってくるものがない。自分にとって本作品は綺麗な車を観た場合と同様でしかない。車がいかにかっこよくても感動はしないだろう。
脚本に弱点がある。分りにくいのは彼の作品の常だが、今回はいつも異常に内容が薄い。多様な要素、エピソードが連続していていろいろ語れそうなのだが、一貫性のある、骨子に当たる部分が脆いと思う。
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