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[コメント] チェンジング・レーン(2002/米)

まどろっこしい“simplicity”=【単純;平易;簡素,地味;純真;無知.】。
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"simplicity"…『羊たちの沈黙』でハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)は、複雑に見える事件の本質と人間(この場合、犯人)の心理を一言で表現した。

私は、サスペンスの醍醐味は、この"simplicity"にあると思っている。どんなサスペンスにせよ、事件の発端は実にシンプルなものであり、それを複雑にしているのは、状況(environment+circumstance)でもなく、時間でもなく、人間の選択と決断。よって、サスペンスこそ、「人間」そのものをジックリと描かなければならない、とも思っている。

ネタやオチ、どんでん返し、トリック…そういう小手先の道具ばかりにこだわったサスペンスが多い昨今、この『チェンジング・レーン』は久々に「人間」をじっくり描いたサスペンスだと思…ったが、いかんせん、まどろっこしい。

ストーリー自体は地味で単純で平板なものなのに、中盤あたりから、その語り口が妙にモタつきだす。「言いたいことは、ココ(喉元あたり)まで出てきてるのにぃー!」ってな感じで、その言いたいことを聞くのを待っているうちに、緊張感が途切れてしまった。

そう、サスペンスには、スピードと持続力および求心力も重要なのだよなあ。元はシンプルなだけに大変な作業なのだが、やっぱり重要だ。

人間はあらゆる場面、朝起きて夜寝るまで、常に「選択」と「決断」を行う。その頻度回数は一分に一回、いや十秒に一回かもしれない。そのひとつひとつが、正しいのか間違っているのか、それを判断する間もなく、また次の「選択」と「決断」が待っている。

結局は、その「選択」と「決断」が正しいか間違っているかは大した問題ではなく(なぜなら、無知な人間のすることなど、ロクでもないことばかりだから)、「選択した」「決断した」という事実だけが、時間とともに残っていくのだなあ…なんて思いながら、トロトロ走る前方の車をアオりながら帰り道を急ぐサイマフなのだった。

[高槻シネマR170/11.29.02]■[review:11.29.02up]

(評価:★3)

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