[コメント] アダプテーション(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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非常に期待外れだった。
当初、プレッシャーと自己嫌悪でボロボロになりながら、必死にもがいていた主人公。傍ら、軽いノリで毎日を過ごしている双子の弟、ドナルドは一気に成功して、余計にプレッシャーを感じる。
前半の、次々に場面が飛び、現在と過去(つーか、どこまで遡るんだよ!)の同時並行のストーリー等々は割と面白く、後半の展開に期待していたが、中々展開しない話に苛立ちを覚え、舞台がNYに写った途端一気に急展開。結果、月並みに終わる。正直、この映画を面白いとは思えない。
発想や構成は面白いし、勿論『マルコビッチの穴』も好きな映画だ。必死に苦悩する姿など共感はできるし、月並みの、どこにでもある作品は書きたくない、と言う気持ち、変に考えすぎて書けない主人公の苦悩。それに対して普通の、主人公が「有り得ない」と否定する映画で成功する弟に対する嫉妬。同時進行する過去の物語、女性記者の破滅。
現在と過去を交錯させながら同時進行させながら、観客にただ原作の背景を見せて居ると思わせて実は女性記者の「破滅」を見せようとしていたのだ。そして、主人公は苦悩しながら、NYに飛び、その女性記者に辿り着いて・・・・・という所までは面白いのだが、どうにもこうにもこの後の展開のつまらない事。
ただでさえ、中々展開しなかった前半部で半ば白けていたのに、やっと展開したと思えば最終的に到達したのは主人公が嫌がってた「並」のクライマックス。なんだなんだ、銃や暴力、セックスにドラッグを描き出して挙句サスペンスとアクションまでしやがって。
この映画のアイデアは面白いと思う。それは認める。それに、この映画を見ながらドナルド・カウフマンの存在を「実在」だと思い込んでいた自分も居た。この映画を見終わって、この映画がどこまでが現実でどこまでが虚構なのか曖昧にすらなっていた。特にラストの「ドナルド・カウフマンを偲んで」というテロップには本当にびっくりした。
だが、退屈なんだよ。あの急展開も、前半と突然雰囲気が変わりすぎて、「サスペンス映画」に成り下がる。別に後半の急展開についていけなかった訳じゃない。ただ、あまりに「並」すぎてがっかりしたのだ。前半も前半で、今思い返せば面白い展開ではあったが、見ていた最中は女性記者が恋に落ちてドラッグに溺れて破滅する事なんざ知らないし、予想だにしてなかった訳だから、「なにいちいち、何度も何度も過去に遡らせてるんだよ」とか「なんで無駄に話を複雑にしてんだよ」とか思いながら、このしつこい過去の回想にうんざりしていた。さらに、それが長々と続くので白け気味。どれだけ独創的な構成(ド、ドナルド・カウフマンの手助けか!?)でも、あの前半じゃ退屈。結果、クライマックスもただでさえ「普通」なのに、前半の白け気味のテンションが持続して完全に退屈。
要するに、前半の独創的な構成、展開は後半部があってのもの。何も知らない観客は過去と現在の同時進行のストーリーに翻弄され続けるだけで、話が後半になってようやく前半と繋がる。しかも、繋がった時は既に急展開の最中。観客置いてけぼり?置いてけぼりにするのは結構だが、それなりの方法を取って欲しい。あの後半部じゃ置いてけぼりにするには魅力がなすぎる。まぁラストシーンの「希望」を見せる終わり方は好きだが。
結局『マルコビッチの穴』の興奮はここになかった。けど、アイデアは面白いと思うし、虚構と現実を曖昧にさせられたのも事実。だけど、つまんないよ、この映画。退屈。ポスターのデザインも結構洒落てて(?)、中身に期待させられてたのに、なんじゃあの後半は・・・。ありきたり、つーか、これがこいつの世界なら、『マルコビッチの穴』は何だったのか問い詰めたい。
ちなみにドナルド・カウフマンは虚構の人物で、チャーリー・カウフマンの双子の弟という”設定”ですが、俺は見終わって家に帰るまで知りませんでした。アカデミー賞までノミネートされてたんですね。
ついでに、冒頭のニコラス・ケイジのナレーション。「ハゲも気になりだして・・・」みたいな台詞には拍手を贈りたい。いや、別に深い理由はないけど。
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