[コメント] サラマンダー(2002/英=アイルランド=米)
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予告でCGで飛ぶドラゴンの姿を見た時、正直な感想は「これは駄目だな」と思ったものだ。低予算をCGでごまかす作品はごまんとあることだし、どうせ碌でもないもの見せられるのがオチ。とか思ったものだが…
意外や意外。かなり楽しめた。元々全然期待してなかったのが良かったのだろう。正直、この作品のお陰でベールを見直すことができた(この後で『リベリオン』(2002)を観たお陰で、ベールは私の中では注目株に変わった)。
本作は決して潤沢ではない予算をほんと上手く使っているので、かつての活気あった時代の特撮を思い起こさせてくれた。確かに設定そのものは陳腐なのだが、人間ドラマが丁寧に描かれているのが面白いところ。絶望の中であるに関わらず、人間はユーモアを忘れておらず、どんな酷い暮らしでも、これ以上悪くなることを恐れる気持ちを主人公のベールはきっちり演じきっていた。
そう。特撮の醍醐味というのは、実は怪獣同士のどつきあいとか怪獣退治にあるのではない。いや、勿論それが重要なのだが、それだけでは駄目なのだ。食事のコースで言えば、それは確かにメインディッシュだが、その前に、そこに至るまでのオードブルとかスープとかがあってこそ、メインディッシュが楽しみになるのであり、デザートまで食べてコースは終了するのだ。
それを映画に当てはめるならば、怪獣との戦いに至るまでの課程が重要。特異な現状にあって展開される人間ドラマの特殊性をどう演出するか、人間の内面にまで入り込んだ物語をこそ必要とされる(私が平成ガメラシリーズを気に入ってるのは、作り手がその辺をよく分かってくれているから)。
本作に登場するメジャー俳優はベールとマコノヒーだけだったが、この二人の対立構図が面白い。特にベール演じるクインは、サラマンダーに対する恐怖心と、共同体の長としての責任感。そして来るべき破滅に対する絶望。それらが全て盛り込まれた人間として存在する。対してマコノヒー演じるヴァンザンは直情型の、まさにヒーロー!と言った感じ。単純に考えるならヴァンザンを主人公にした方が良いのだが、戦いを恐怖するクインを主人公にしたことで、物語にふくらみを持たせることが出来た。 その中に謎解きあり、ロマンスあり、そしてラストの安心感ありで、なかなかバランス良くまとまってるのがポイント高し。
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