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[コメント] 接吻泥棒(1960/日)

団令子がコンサートに行くために自宅で着替えをするシーンと、宝田明新珠三千代のボクシングジムでのやりとりをクロスカッティングで繋ぐ。この部分、宝田のシーンは画面端に赤、団令子のシーンは青の帯が出ているのは、赤コーナー、青コーナーの意味か。
ゑぎ

宝田は日本チャンピオンのボクサーの役なのだ。団令子の母親は東郷晴子で2人とも関西弁。団は中山豊が運転手の車で発進する。一方、宝田は、ジムを出たところで、草笛光子につかまるが、草笛の後ろには、トップ屋の中谷一郎。中谷はピンクのヘルメットにゴーグル、黒い革ジャン、カメラを2台提げている。宝田の恋人と目される有名デザイナーの草笛をつけてきた、ということだ。中谷は宝田の車をバイクで追跡する。宝田の運転手は加藤春哉だ。そして、2台の車は、銀座で遭遇し、最終的に洋装店に突っ込むのだ。宝田は、車の中の若い女性(団令子)を見つけて駆け寄る。気絶している団。ラーメン鉢の水(?)を吹きかけ、口移しで飲ませる宝田。この瞬間を中谷が写真に撮る。こゝになぜか石原慎太郎が登場し、タイトルの「接吻泥棒」という発言。中谷の写真は、雑誌の表紙になる。こゝまで畳み掛けて、タイトルイン。

 団令子の学校の場面。キリスト教系の女子校だ。なんと高校生だったのか。園長だろうか尼僧の格好をした沢村貞子、この人、こういう格好もよく似合う。他の先生には、純潔教育担当という有島一郎がおり、あと村上冬樹千石規子塩沢ときなど。職員会議では、雑誌の表紙を飾った団の写真が問題になるが、女子高生の間では団は英雄になる。

 宝田の方は、転がり込んでいるショーダンサーの北あけみの部屋で、雑誌の写真の件でとっちめられる。このシーンのネグリジェ姿の宝田、流石に気持ち悪い。また、ボクシングジムで、いきなり河津清三郎に詰め寄られる。河津も関西弁なので、団令子の父親だとすぐわかる。河津に腕をつかまれたところで、時空を飛ばして、酔っ払ってバーに入る2人のショットに繋ぐのが川島らしい。2人は意気投合しているのだ、こゝはママが新珠のバー。河津は宝田のスポンサーになってくれると云う。

 あと、草笛光子はブティックの経営もしているデザイナーの先生だが、フランスの雑誌からパクっている(トレッシングペーパーで描き写している)場面がある。彼女も宝田の熱烈なファン。というワケで、新珠、草笛、北、そして団の4人から追いかけられる、モテモテの宝田を描いた映画だ。

 さて、特筆すべきシーンは沢山あるが、まずは、北あけみのクラブのシーンで、なぜか団令子がセクシーダンスに参加する場面。やっぱり、この頃の北あけみのナイスボディに団は全然敵わない、と思ってしまったのだが、もっと団の肢体をちゃんと撮ってあげるべきだとも思った。この流れで、クラブ内の小さなプールでの、キャットファイトもあるが、途中で新珠がパイ投げ、草笛のスパゲッティ投げが、参戦し、キャットファイト自体が中途半端になったと思う。あと、沢村いき雄がオヤジの蛇料理屋。このセットがいい。沢村がシマヘビを平気で手で持って扱うのには驚かされた。それと、新珠はセスナ機の操縦が趣味、という設定で、彼女が和服を着て操縦する飛行シーンは、よく撮れている。ミニチュアとの繋ぎなのだが、東宝らしい特撮だ。

 また、宝田がパンチで空を切るショットに、パンチングボールのショットを繋ぐとか、新珠が祝儀袋で宝田の頬を叩くショットと、北あけみが宝田をビンタするショットをマッチカットで繋ぐといった、才気走ったカッティングがある。この北のビンタのあと、アパートのバルコニー側から撮った移動ショットもとても驚きのある視点移動で記憶に残る。

 そして、クライマックスはボクシングの試合場面で、こゝは予想外にきちんと見せる。フルショットとウエストショットぐらいに寄ったショットを上手く繋いで迫力があるのだ。しかし、あまり痛さは感じさせないし、ちょっと長いとは思う。エンディングは、またも蛇料理の店の場面で、石原慎太郎が再登場する。彼が色紙に「接吻泥棒 終」と書いて終わるというのは粋な処理ではないか。尚、石原慎太郎が左利きだと分かる。

#備忘でその他の配役等を記述します

・ボクシングのコーチは堺左千夫。ジムの玄関で児玉清がワンカットのみ映る。

・団令子には弟がおり頭師孝雄。お手伝いさんは河美智子。同級生に星由里子

・新珠のパトロンは上田吉二郎

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