[コメント] トランスポーター(2002/仏=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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バスの車内やコンテナの隙間といった狭い空間を活かしたアクションが面白い。冒頭のカーチェイスも、狭い路地のシーンのみならず、通行人をギリギリで避けて走るスリルに、空間の限定性を活用する演出が活きていて好感触。オイルを利用したアクションのアイデアも愉しい。ジェイソン・ステイサムをやけに脱がせたがるのは何なんだとも思ったが(後の2、3にも継承される)、人身売買を阻止しようとするシークェンスでの格闘シーンでの上半身裸は、明確にカンフー・アクションのそれだった。
結果的にフランクに救われることになったライが、急にかいがいしくフランクの世話を焼こうとする様子は、欧米人のアジア女性に対する幻想の反映とも思え、ちょっとキモイ。それを演じているのが、またいかにも欧米人が好みそうな東洋風のウーパー・ルーパー顔なスー・チーとは。
強盗団を乗せるシーンでの、一人の人命より、プロとして予め計算し抜いた車のコンディションへのこだわりを優先する姿勢や、仕事後に、車を丁寧に洗うシーンがあることなどから、このフランクというキャラクターは車と一体として捉えられているのかな、とも思ったのだが、実際は格闘アクションとしての面が強く、意外に車はそれほど活躍しない。序盤では匂わされていた、自分の愛車に対するフランクのフェティッシュなこだわりも、早々に後退してしまう。
後の「3」は車との一体性という意味では究極的な設定が与えられていたのだが、その「3」でさえ、その設定が充分に活かされていない。最大の失敗は、作り手自身がフランクを「運び屋」ではなく「運転手」と誤解したままシリーズが重ねられていったことだろう。「依頼品の中身は見ない」というフランクのルールを脚本に活かせば、サスペンスとしての面白みを増すことが可能なはずなのに、それをしない。リュック・べッソンのような、脚本に仕掛けをしてやろうという野心を欠いた人間の手に委ねられたのは、フランクというキャラクターにとっても、観客にとっても不幸なことだった。
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