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[コメント] 丑三つの村(1983/日)

田中美佐子五月みどり池波志乃のトリプルヌードの大盤振る舞いは買いたいが、都井睦夫役に古尾谷雅人ではイメージと違うし、なにより 音楽が酷すぎる。
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分がこの惨劇でもっとも怖ろしいと感じるのが、最愛のばあちゃんの首をはねたということだ。 この世への未練を断ち切った人間は30人も殺せるほど鬼になれるものか?と、にわかに信じられなかったが、ばあちゃんを殺すことがあのような鬼になるための絶対条件だったという行き場のない閉塞感がたまらなく悲しい。鬼になったからばあちゃんを殺すことができたのではなく、ばあちゃんを殺したから鬼になれたのである。

この極限心理を描くことは並の映画監督では無理ではないかと思ってしまう一方で、 そもそもこの事件は幼稚な青年のただの逆恨みとしか受け取れないのも事実であり、どう描いても万人を共感させることは不可能ではないかと思う。そう考えると『八つ墓村』でこの事件をオカルト風にアレンジした横溝正史はある意味間違ってないと言えよう。

ところで、都井睦夫の顔写真を見た時にピンときた俳優がいる。 私が愛してやまない渥美清である。 都井睦夫と同じ四角い顔をしているというルックスもさることながら、渥美も都井と同じく肺病を病んだことがあり、片方の肺を切除しているのである。都井の心情を心の底から理解できる男は渥美以外に誰がいようか。『八つ墓村』で金田一を演じている場合ではないのだ。しかし残念ながら1983年当時の渥美は53歳であり都井青年の役柄からはかけ離れすぎていたし、何より寅さんのイメージを壊すようなこんな役を世間が許すわけがないだろう。

実際、今村昌平から『復讐するは我にあり』の主役にオファーされたのを「寅さんのイメージを裏切りたくない」との理由で断った過去があるそうで、渥美はそれほど寅さんを大切にしていたようだ。しかし心のどこかでは役柄の幅を広げたい気持ちもあったはずである。しかし悲しいかな寅さんの呪縛からは並大抵の役では逃れることはできなかったことは寅さん以外の諸作品を見れば明らかであろう。結果論であるが、本当に寅さんの呪縛から逃れたかったら、これぐらい強烈な役柄を演じなければいけなかったのだ。

(評価:★3)

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