余談だが、ニコラ役の人は、イタリアの石坂浩二だ。

と馬鹿な話はさておき、この映画のマッテオは、私の映画観賞の中でも、五本の指に入るお気に入りのキャラクターである。お気に入りというのは不適切ではあるが。 マッテオは、ギラギラとした抜身の刃のような男なのだが、同時に哀れなほど繊細である。私はマッテオのようにハンサムではなく、まったく違うタイプなのだが、見るたびに激しい共感を覚える。マッテオのとる不可解な行動は、すべて、理由など問わずともすっと受け止めることができる。不可解だと思いつつも、だ。愛することと拒絶することとが、背中あわせになった人間関係を生きるマッテオには、結局、深い絶望しかなかった。その悲しみは、いつもひりひりと私の心をしめつける痛みとなる。まるで私のためにマッテオが死んで「くれている」ように思うことすらある。たとい私には絶望も悲哀もありはしなくとも。 いつかマッテオ以上に、感情移入してしまう登場人物に出会いたいものだ。