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[コメント] プリティ・ウーマン(1990/米)

リチャード・ギアって罪な男だ。
G31

 おとぎ話。夢物語。現実には起こり得ないー。日本人に多い価値観から言うと、こういうものに真面目に取り組む者は馬鹿なんだよね。だから、日本人がこういう作品を撮る場合、一段上に立った目線から茶化したり、笑いに誤魔化したり、自分たちは分かってやってるんですよという態度をとろうとする。マジシャンで言えばゼンジー北京やマギー司郎のスタンス。好きですね、僕も。

 でもやはり北見マキさんが好きだよなと。マジシャンではだが。ハリウッドもそう。真面目に、ひたむきに取り組むという。だからこそ、起き得ないことが起きてみえる。開頭シーンがハンド手品で始まったのが象徴的だけど、本作は、いま見返してみると、前半は案外ぎこちない。リチャード・ギアは、あまりに色気がありすぎて、「競争主義を生きる」酷薄な投資ブローカーとかに見えない。ジュリア・ロバーツも、(当たり前だけと)職業売春婦に見えない。ロータス・エスプリ(っつんだって)の運転がビビアン(ロバーツ)に代わり、ブォーン!と走り出してから少しは変わるかと思ったけど、相変わらすぎこちなさが続いた。

 本作のマジックを成立させた最大の貢献者は、ホテル従業員たちですね(支配人含む)。彼らは、富裕層や上流階級の人たちに尽くして働く身。それこそ自分を無にして彼らに尽くす。だから、彼らが何を喜び、何を煩うか、彼らの心の動きをよく知っている。でも自分たちは富裕層でも上流階級でもない。自分たちと同じ「現実の厳しさを知る」クラスの代表として、ビビアンが階段を昇るのを応援するとか手助けする、そんな気持ちがあんのかなという気がした。気のせいだね。

 僕は、ロバーツはアメリカ的な善なるものを体現していたと思う。快活で、飾りがなく、頭も回る。昔で言えば、『風と共に去りぬ』でビビアン・リーが演じたスカーレットとか。『アメリカ万歳』でゴールディ・ホーンが演じたサニーとか。『恋人たちの予感』でメグ・ライアンが演じたサリー。マケインの副大統領候補だったサラ・ペイリン(←?)。。。より有り体に言えば、ロバーツ自身がのちに取り組んだ『エリン・ブロコビッチ』だね。

 こういう善の前では、ちょっとした瑕疵は妨げにならないのです。金銭主義とか、女性蔑視とか、職業差別とか。。。まあ、こうして書けば書くほど、メチャクチャ大きい傷のように思えてきました・・・。

 ギアは、『愛と青春の旅だち』と同じ話なのに、臆面もなくこういう役を演じるのはやはりエラいと思う。最終的には彼らしいチャーミングな役所を嫌味なくものしていた。だからこそ罪作りなのだが。。。

85/100(0/9/5盤見、レビュー追記)

(評価:★4)

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