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[コメント] 暁の合唱(1941/日)

お国のために死ねるかと問われたら、まったく自信がない。だがこの木暮実千代のためになら、命を捨ててもいい気がする。
G31

 自分の頭で考える、自分の足で立つ、そういう女性の姿を描いた作品は好きだ。そして、そういう近代的な女性を描くのに映画として必要な、若く颯爽とした美しさ、をあの木暮実千代が体現していたとは、意外な発見であった。こうして見ると、戦後に小津が『お茶漬けの味』あたりで木暮につけた役柄の意味合いがわかる。われわれは、その途中の玉石作品群を見てないわけだし、小津の演出意図が正確にわかるわけでもないが、とても意地の悪い演出に見える、という文脈にたどり着く。

 特定の女子車掌が同乗すると、わざと寄り道してイタズラする、なんて悪徳運転手が出てくる。昭和16年という、太平洋戦争に突入した年に公開された作品で、15年戦争という意味では当時も戦時下だったのかもしれないわけだが、決して国民全体が一つの方向だけを向いていた訳ではないのだ、ということをわからせてくれる意味でも貴重なフィルムである。

 どっかのト知事(トは1コしかないけど)の撮った特攻映画のタイトルも、彼女が生活を育むその地域や社会、そういうものを守りたい、その象徴として、彼女を守るためにこそ死ににいくのだ、という意味でなら理解できる。

75/100(07/09/15記)

(評価:★3)

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