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[コメント] ブレッド&ローズ(2000/英=独=スペイン)

グローバリズムの落とす影。強者が弱者を搾取するという構図は、どこの国でも、そしてミクロでもマクロでも変わりない。[サイエンスホール (試写会)]
Yasu

高校生の頃、ビル清掃会社でバイトしていた時期がある。

スーパーやオフィスの床を掃除する仕事で、同僚には中国や韓国から来た人が多かった。日本語が達者な人もいれば、ろくに話せないような人まで、様々な人が一緒に働いていた。

主人公たちのように、彼らも給料をピンハネされていたかどうかは知らない。いや、そんなことはなかったはずだ。少なくともそう信じたい。しかし、少なくとも、日本人でない、さらに欧米人ではない彼らがこの国で金を稼ごうと思っても、ビル清掃のようなあまり格好いいとは言えない仕事にしかありつけないのも事実だ(ビル清掃の仕事を見下して言うわけではない。念のため)。

我々バイトの中で一番の稼ぎ頭は、キムさんという韓国からの留学生だった。彼は言語学を専門に勉強しているインテリで、私が辞める少し前に日本を離れ、次の留学先である中国に渡っていった。そんな人でも、日本で働こうとしたらこんな仕事くらいしかないのが現実である。

そんな状況はアメリカでも同じ。外国人が就ける職業などたかが知れている。しかも主人公は不法移民ということで、給料はピンハネされ、雇用条件も安定していない([1])。

ただ、彼女のような安く使われる不法移民が増えたせいで、アメリカ人の職が脅かされて経済にも影響が出ている([2])ということは、本作で暗示されるだけでなく、ドイツのトルコ人移民問題のように以前から広く指摘されている(そしてやはり日本でも一部にはこの状況は存在する)。

それでも考えてみれば、そもそも不法移民が生まれた原因は先進国(この場合アメリカ)が途上国(メキシコ)から搾取しまくり、途上国の人々が貧しい国内では食えなくなった([3])からであって、結局は [3] → [1] → [2] → [3] …の堂々巡りだ。

この映画では [1] の問題しか直接的に描かれていない(これが本作の唯一の弱点と言えるかも知れない)が、大局的に見ると、やっぱり最終的には一企業がどうこうできるような問題じゃないのだろうなあ、と、そんなことを考えたり。

全世界の人々に「ブレッド(日々の糧)」と「ローズ(心のゆとり)」があまねく行き渡るのは、いつの日だろうか。

(評価:★4)

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