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[コメント] 不信のとき(1968/日)

夫、妻、ホステス。皆が被害者であり加害者でもある。確かに怖い映画だ。[Video]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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田宮二郎演じる夫はこの話の中では一番の被害者に思われる。しかし元はと言えば、最初からホステスの誘いに応じなければ済んでいた話であり、結局は彼本人が蒔いた種なのだ。

岡田茉莉子の妻も、どちらかというと同じく被害者のように見える。子どもができないことを夫に責められ、おまけにその夫には裏切られるのだから。しかし、子どもができた途端に尊大な態度(に見えた)を取る妻は、ホステスにとってはやはり自分の地位を脅かす存在である。セリフにもある通り、「両親がいて乳母がいておばあちゃんもいる、いい御身分ね」というわけだ。さらに子どもが生まれた後で、親は誰かということについての、夫への衝撃の告白が妻から飛び出してくる。夫にとっては苦悩であったろう。

そして、若尾文子のホステス。初めのうちと後になってからとで態度が豹変する彼女は、夫にとっては最大の加害者だ。しかし、何度も何度も男に捨てられてきた彼女にしてみれば、子どもがほしいのに叶えられないという無念さと、だからこのくらいの幸せを手にする権利くらいはあるはずだという思いがあるに違いない。彼女自身にしてみれば、彼女だってやはり被害者なのだ。

というわけで、これは「みんな悪くて、みんな悪くない」という話なのでした。誰を指弾すべきか、はっきり白黒付けられないのだから、やっぱり怖いよ。

(評価:★4)

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