[コメント] 12モンキーズ(1995/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画における引用の素晴らしさは特筆ものだ。TVアニメが映画の前半部から引用されていたことから、なにか予感はあったが、その引用のスペクタクルが炸裂するのが、主人公二人が映画館に入って別人に扮装したあの場面。『めまい』や『鳥』のあの場面を選択した着眼は抜群だと思う。理屈を超えた暗示作用が二重三重に作用する。
ちょうどブルース・ウィリス とマデリーン・ストウの二人が別人に扮装するときに、彼らは『めまい』を見るわけだが、 『めまい』も同様に仮装が重要なモチーフとなっている。『めまい』において、ジェームズ・スチュアートには、髪を金色に染めたキム・ノバクでなければディーバとなりえなかったと同様、本作品においても、金色に髪を染め上げたマデリーン・ストウでなければブルース・ウィリスの愛の対象にはなれなかった。この金髪のマデリーン・ストウが実に美しい。理知的な精神科医から、恋に落ちた一人の女と化したことが有無を言わさぬ非論理的な説得力で伝わってくる。この引用がなければ、マデリーン・ストウの変心に説得力を持たせることは難しかっただろう。
また、常に既視感を感じ続けていた主人公二人は、同じように既視感にさいなまされた『めまい』の主役二人に響きあうものだし、『めまい』の引用によってこの映画のラストが、作中人物の幻想などでは終わらないという、予兆のこだまも響かせ始めるのだ。
『鳥』の引用はこれよりも効果は限定的ながら、動物の愛護がこの映画の基調にあることと微妙に響きあうということと、『鳥』同様、金髪の女に災厄がふりかかるという予兆効果を持っていると思う。
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