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[コメント] マトリックス(1999/米)

ガンダムと第三エロチカ本歌取り(シブすぎる比較。21 世紀だぞ今)。繰り返される緑色の管理社会と、電気羊かどうかは知らぬが夢を見るアンドロイドたち、とでもいった風情。古きよきSF・近未来へのオマージュ。
カフカのすあま

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







TVでやっていたので再見。またもや、みぞおちにぐいっとハマった。

ウケ狙いとの声もあるようだけれど、これは明らかに『ブレードランナー』ですでに完成された近未来をさらに進めるためのメタ言語、もしくはメタメタ言語が語る SiFi、サイバーパンクだ。

注:創造におけるメタの世界とは ― これまで数々の作家たちによって作り上げられた共通の様式・形式を「ふまえ」ることにより、その形式じたいを言語にしてしまおう、という試みをいう(←てきとうな定義につき、眉唾で)。

メタな世界では言葉などすでに完成された世界に吐き出される寝言でしかなく、言葉はその目的すらあいまいなまま落下する。脚本、よいと思う。浮きまくりの状況説明ととられようが、唐突で分かりやすい原典の引用といわれようが、やたら意味深長で哲学めいたタワゴトといわれようが、そこには確信犯的な疾走感、勢いがある。微妙なズレが快感。

視覚的な様式美にも脱帽。アメリカが、ハリウッドがこんな美しいものをつくれるなんて悔しい。地下組織の船内のデザイン、トーン式ではなく、ジーコロ回すパルス式のアナログ電話(またもやローテク)。エントランスホールでの銃撃戦で、主役ふたりが立ち去ると同時に崩れるコンクリート壁。スプリンクラーの水。背筋がぞくぞくする舞台効果がもりだくさん。

顔つき体つきのみで選抜されたであろう品よく趣味のよい「ハンサム系」の主人公たちがビシビシ決める「型」。「これこれ」「ありがち」「そうそう」と笑いながら作っているであろう「かっこよさ」。チラリと透けて見えるその創作の過程にこそシビレてしまいました。

「これしかない」緑色がかった空気は近未来のお約束(例:『デリカテッセン』その他)。

近未来は形式の美学。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)たかひこ[*]

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