コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] A.I.(2001/米)

語りすぎる人が語りえないものを語ろうとした「愛」と、語らない人が最後は語りうると決意を持って語ってしまった「愛」の対比。
minoru

やっと見た。

純粋に「映画そのもの」を見ることが出来ない不自由さは自明のこととして・・・。

DVDのおまけとして付いていた「メイキング」でスピルバーグはキューブリックという名前を何度口にしただろう。いたたまれなくなるほどだった。ただ黙って「キューブリックに捧ぐ」と一言で終わらせることができないのは、よっぽどやましいことがあるのではないかと疑ってしまう。 いやスピルバーグがそんな悪人ではないことは知っている。その名を何度も口にせずともDVDの売れ行きにはなんら影響がないはずなのに、まるで強迫観念のように死者の名を呼びつづけるスピルバーグが「悪人」であるはずがない。「悪人」と呼ばれるのはキューブリックのほうが相応しいのは顔をみればわかる。「悪人」こそ魅力的だというつぶやきは大して面白くもないが、 本当の悪人は黙って悪を行うのだということは映画の約束ごとのはず。

語りすぎる人が語りえないものを語ったつもりの「愛」と、語らない人が最後は語りうると決意を持って語ってしまった「愛」の対比として「A.I.」と「アイズ・ワイド・シャット」はデビッドとクマのように寄り添っているのかもしれない。

語りすぎることで何かがスルスルと映画から抜け落ちていき、その後その欠落を補うために語らなくても済んだはずの言葉を映画に投げかけなくてはいたたまれなくなるといった徒労の感覚は「アイズ・ワイド・シャット」にはなかったものだ。「善人」は「悪人」より人を疲れさせるのかもしれない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)crossage[*] MUCUN[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。