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[コメント] GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995/日)

前触れとシフトの妙
hk

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「企業のネットが星を被い電子や光が駆け巡っても国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来」  「今われら鏡もて/見る如く見るところ朧(おぼろ)なり/されどかのときには顔を合わせて相見えん/童子(わらべ)のときは語ることも童子のごとく/思うことも童子のごとく/論ずることも童子のごとくなりしが/人と成りては童子のことを棄てたり」

 この時代設定と聖書の言葉とのはざまに物語は生まれる。恐怖/不安とともに希望も感じるというアンビヴァレントな精神状態(海へのダイブ=電脳へのダイブ)。人形使いにより擬似人格を刷り込まれ本来の人格を忘れた者達の存在は、それを見る者に「本来の人格とは何か」という内省を促す。「本来」という言葉の意味は限りなく脱臼させられ、近似値としての唯ゴースト論なるものの到来を予感させる。記憶/自我の存在証明などもはや必要なく、ただ今そこにゴーストが存在するという事実だけを受け入れるしかない世界(「自分らしきもの」)。情報の海に生まれた生命体との遭遇。極限値として想像する他なかったものが現実に目の前に現れる。それは上部構造へとシフトすることへと誘い、主人公はそれを「確かめる」ために融合を受け入れる。

 ドラマチックな展開ではありながら、限りなくストイックな世界描写・人物描写は、見るものに画面の表面には現れ出ない潜在的な思考/感性の戯れの存在を感じさせ、そこに同一化することを強いる。何かが到来するのではないかとの予感。既に我々を侵食している何かがもうすぐ目の前に形として成熟するのではないかとの予感。人が神を感じるときとは、その成熟を感じとった瞬間なのかもしれない。上部構造へのシフト...

(評価:★5)

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