コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ケス(1969/英)

子供たちの特有の世界や労働者階級の生活を素直にドライに見つめている。それでいながらリリシズム溢れる作品に仕上がっている印象深い作品。ドラマチック過ぎないテーマの距離感がシンパシーを生む。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分の少年時代の頃や、兄弟や友人との思い出や、学校のワンシーンを直接似たような経験は無くとも、ふと誘発され思い出す匂いが感じられる。そんなノスタルジーを伴う切ない作品。邦画がやりがちな、大人の視点で描く少年の心象風景などでは無く、きちっと少年たちの視点に作品がなっているのが素晴らしい。どこか寂しげな空気感漂うロケーションにしても詩的なセンスを感じる。この作品を見ると『リトルダンサー』が非常にハリウッド的でドラマティックに演出された作品であったことに気付く(まぁ、あれは、あれで大好きな作品なので良いんですが)。この映画の淡々と進むリズム感や、監督の主人公に感情移入しすぎない適度な距離感がとても良い。予定調和に終わらないラストもリアルだし、実際に労働者階級在住の素人が多数を占めるキャスティングの演技も素朴で胸を打つ。個人的に創り込まれた隙の無い作品に出会うと、才を感じるタイプなのだが、ありのままの少年の日常を切り取ったような、飾らない本作にも多大なる才を感じた。上質な短編小説の様。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。