主演の熱演に乗れるか、或いは陳腐に見えるかは、観客自身の人生に対する「自覚」に掛かっているのではないか。

藤原竜也の演技を上手いと思った事は無いが、彼は自分が「観られる事」を受け止めようとしていると思う。（彼を<格好いい>という若者は俺の身近にも居て「こいつ大丈夫か？」と心配したり「年下から見るとこんなのが<格好いい>になる時代かよ」と感慨深くさせられて来たが、) まぁそろそろ藤原を信用してもいいかな、と思わせた。

松山ケンイチは「銭ゲバ」を演じるなら藤原に勝るのだろうが、他人を「信じる」事で勝つと言う、弱さを強さに変えるカイジでは、確かに藤原が適任だったようだ。

香川照之は彼のキャリアからすると<罠>ではないかという位に「難しい」見せ場で、溺れる事無く見事に<毒演>し切った。(蛇足乍ら、今回の天海を観て「この女はいわしげ孝の漫画原作で演らせてみたい！」と妄想してしまった。)