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[コメント] この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019/日)

先行版より評価は落ちてしまうが、完成した本作を観られた事は素直に嬉しい。☆4.3点。(reviewは例によって駄文なので要注意。m(_ _)m)
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
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先行版で、のんの表現は素晴らしかったのだが、画柄と相まってすずさんが原作よりやや幼い印象になったのが残念でもあった。(噂では当初綾瀬はるかも検討されたとも聞くが、彼女だったら似て非なる印象だったろう。最終的にどう転んだかは判らないが。)

兎も角<声>は、すずさんを囲む周囲こそが素晴らしかったと思う。中でも晴美役の稲葉菜月と径子役の尾身美詞は佳かった。また夫=周作役の細谷佳正と哲役の小野大輔も佳かった。

のんちゃん同様、悪いと言ってるのでは無いのだがやや残念だったのは、実は妹=すみちゃん(潘 めぐみ)とリンさん(岩井七世)だった。お二人共声だけで恋をしそうな程綺麗な声ではあるのだが、ややアニメ的(漫画的?)過ぎるのだ。その点が今回の長尺版でどう作用するのかが不安要素だった。

     ◆     ◆     ◆

今回新たに加えられた要素として重要な役割を果たすテル役の花澤香菜は、私としては失敗だったと思う。彼女は非常に人気のある声優さんらしいのだが、上記の私の不安が完全に的中した形となった。遊女という非日常を考えると許容範囲内の<声>なのかも知れないが。飽くまで私個人の好みの問題かも知れない。

前回(先行版)、のんだけは後日の別録りで、キャスト達は彼女抜きで収録に臨んだらしい(完成後に細谷佳正と「やっと会えました」等と言っている)。それが声に<硬さ>を生んで、作品にとっては却って良かったのではないか。

     ◆     ◆     ◆

本作の中で、前作の同じシーンの意味(印象)が変わる、というのは本当だ。物語により深みが増した、というのもそうだと思う。前作で「運命と偶然に翻弄された一人の日本人(の娘)」だったすずさんが、本作では「心に葛藤を抱えた一人の女性」になった。それは佳かったのだが、そうすると前作で細かく描写された日常は逆に蛇足に思えてくる。勿論、悩み葛藤する女性の中にも日常の生活は続くのだが、本作はすずさんの物語に大きく舵を切ったのだから、もんぺの仕立てや楠公飯の件はバッサリ切ってしまっても良かったのではないか。散漫な印象になってしまったのが残念。

原作にも無かった夫婦生活の場面については…、微妙。あってもいいとは思うが、本当に必要だろうか。のんちゃんに喝を入れたという事なのか。

(評価:★4)

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