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[コメント] 薬の神じゃない!(2018/中国)

21世紀の現代中国に現れた「闘う映画」。☆4.5点。
死ぬまでシネマ

2018年に本土で公開されたこの映画の本編中には、マスクをした多くの人々が現れる。彼らは免疫力の低下の為に、感染を恐れているのだ。2020年、日本の映画館でマスクをした我々がそれを観ている。

中国でマスクと言うと、新型コロナ以前では香港を想起させた。そのマスクは官憲から個人を隠し、民衆が一体となって闘う為の武器の一つだった。この映画を観て、香港を考えない訳には行かなかった。この映画は数々の賞を受賞したとの事だが、中国の観客・審査員の中にも、そうした人々が多くいたのだろうと思う。

この映画では主人公達に共感を寄せる刑事が登場する。正義感が強いその青年は、主人公の義理の弟でもある。この人物によって映画は国家への糾弾をギリギリの所で回避している。詰まり、法秩序と弱者弾圧の中で生じた軋轢を、ウヤムヤにしているのだ。この事は世界の白昼に晒せば非難されるべき詰めの甘さと言える。しかし現在の圧倒的な国内情勢を考えれば、見事な抵抗表現だと思わずにはいられない。旧ソ連国内で多くの芸術家達が行ない続けた抵抗を、見る思いがする。

    ◆    ◆    ◆

作中グリニックと呼んでいる薬剤は、日本でいう所のグリベック(イマチニブメシル酸塩)だろうか。慢性骨髄性白血病(CML)以外にも、KIT陽性消化管間質腫瘍(GIST)の治療薬でもある。こうした決定的な治療薬を安価に供給出来ない国家を社会主義国と呼べるのだろうか。福祉国家ですらない。日本でも<決定的治療薬>を高価に販売した製薬会社を、ノーベル医学生理学賞を受賞した何某が226億円の支払いを求めて訴えたが、果たして彼はどこを向いているのだろう? こうした私欲と利権が入り乱れた世界が、コロナ禍をキッカケとして共同体として成長する事を念じてやまない。

(評価:★4)

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