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[コメント] 杏っ子(1958/日)

この時代にこの風景はまだ少なかったかもしれません。経済成長が進んだ今、もっとこのドラマと同じ境遇の夫婦や家庭が存在しているはずですよ。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画が公開されたのが1958年です。今から50年以上前ですね。半世紀経っているわけです。でもきっとこのドラマを見て”他人ごと”と思う方は少ないでしょうね。多かれ少なかれ、このドラマと同じ境遇の夫婦は多いはず。私自身にも身に覚えがあるシーンがありました。

この映画の救いは佐分利信演ずる父親役だけです。彼の存在がこれを映画のドラマとして何とかとどめています。

しかしながら現実はもっと厳しいでしょう。このドラマでは妻の後ろ盾として、分別のある作家の父親がいてくれるわけですが、後ろ盾のない妻も多いはず。夢と希望を抱いて結婚した妻が、その後の夫のリストラや失業で行き場を失う場面も多いでしょう。このドラマでは子供がいませんが、実際は子供を抱えて家を出る妻も多いはず。この主人公はまだ恵まれた女性です。

最後に佐分利信が言います。「妻は一生の苦しみ。夫は一瞬の苦しみ。」女性の苦しみを理解するのには十分すぎるお話ですね。

夫が行き場を失ってアルコール依存症に陥って行くディテールもなかなかリアルです。家で不愉快な思いをさせるほどアルコールを飲んではいけません。ほどほどにしておきましょう。

最後に香川京子さん演ずる主人公が、荒れ狂う夫の待つアパートに凛凛として向かいます。そこにエンドタイトル。この終わり方は現代のドラマにはない、50年前のホームドラマの典型ですね。

この分野は松竹が得意で。小津安二郎監督の作品が代表例。この映画は東宝ですね。東宝で活躍されたスターが次々に出演しています。

香川京子さんはとてもお綺麗ですね。上品で悪びれない。とても素敵な女性です。 彼女を見るだけで価値のある映画だったと思います。

2009/03/15

最近、土居健郎先生(精神科医)の「甘えの構造」という古い本を読んでいたら、ちょうどこの映画のことが書かれていました。

「甘え」という言葉は日本語にしか存在しないそうです。

でもって、この映画の父娘の甘え方の絶妙な感覚が日本の「甘え」であると書いてありました。

ちてに勉強になりました。

2009/05/04

(評価:★3)

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